※八晴
※若干未来設定あり?
『貴方がもしも、』
もしも、八雲が赤い目を持っていなかったなら、
幽霊は見えなかっただろうし、きっと普通の日常を送っているだろう。
そしたら私は八雲に美樹のことを相談しに行かなかっただろうから、
きっと出会えなかった。
そうなれば八雲は私のトラブルに巻き込まれることもなかった。
もちろん八雲は後藤さんにも石井にも会ってないだろうし、
事件に巻き込まれることも、命掛けの駆け引きをすることも、
重要参考人として警察に追われることも、きっとなかった。
もしかしたらあんなに性格が捻くれなかったかもしれないし、
普段運動をしていなさそうなのに意外と運動神経はいいから
爽やかなスポーツ少年になっていたかもしれない。(想像したら気持ち悪くなった)
面倒見もいいし、頭も良いし、身長も高いし、クマと寝ぐせ頭はどうかわからないが、
顔も整っているので、きっとモテモテだ。
みんなに慕われて楽しく過ごすのだろう。
家族と幸せに暮らし、仲の良い友人と一緒に遊んで、
可愛い彼女をつくって、人生を満喫しているだろう。
考えるまでもなく、八雲にしてみればそっちの方が幸せなのだ。
だから、『私に出会わなかったかもしれないその人生と、今と、どっちがよかった?』
だなんて、答えは最初から決まっている。
八雲の幸せを望むのならば、前者の人生を祈るべきなのだ。
わかっているのに、そう思うことすら嫌な自分がいる。
なんて我儘で、自分勝手で、最低なのだろう。
結局私は自分の幸せしか願っていないではないか。
でも、私にはもう八雲がいない人生だなんて考えられない。
彼に何度救ってもらったか、もう覚えていない。
彼がいなかったら、私はとっくに死んでいるかもしれない。
なんて、言い過ぎだろうか。
ぼんやりと、相変わらずの寝ぐせ頭とYシャツにジーンズ姿の八雲の姿を見ながら
そんなことを思っていると、視線に耐えきれなくなったかのように
八雲が居心地が悪そうに頭をかいて目線を私に向けた。
「…おい。さっきからなんなんだ」
「え?」
「うつろな目でこっちを見るな。…またトラブルか?」
「違います。…ただ」
「ただ?」
「…八雲君は、私と出会って良かったのかなぁって」
最初は『八雲の目が赤くなかったらどうなっていたか』のことを考えていたのに『私と出会っていなかったらどうなっていたのか』にすり替わってしまっていることには気づいていたが、構わず続けた。
「私と出会ってなかったら、八雲君は、トラブルにも巻き込まれてなかっただろうし…」
私の言葉に怪訝とした八雲に、私は慌てて言い訳のように今まで考えていたことの経緯を
付け足すと、八雲は鼻で笑って馬鹿馬鹿しい、と呟き、私に手を伸ばした。
「馬鹿か、君は」
デコピンをされるとは予想外だったが、
しょぼくれた気持ちに喝を入れてくれたと考えて私はいつも通り怒ろうとした。
「ちょっ!馬鹿馬鹿って何回も…」
そうしたら次は意外にもふわっと優しく抱きしめられたので声が出せなかった。
八雲が小声で何かを呟く。
「…マリッジブルーか何かなら本気で勘弁してくれ」
「…八雲君?」
「…僕は、後悔しない」
「へ?」
「仮に僕の目が赤くなかったとして、君の語るような人生だったとしても、僕は君を選んだことを後悔しないよ」
「それって…」
「…」
察してくれ、と言わんばかりに赤くなった耳と頬をよく見ようとして
強く抱きしめられて身動きができなくなり、それはかなわなかった。
もし、八雲が左目が赤くなくて、幽霊が見えなくて、
普通の人生を満喫していてモテモテで、
私が相談しなかったとしても、
私を探して、私を選んでくるってことで、いいのかな?
自分でたどり着いた答えに自信がなくて、八雲に尋ねたかったけど、
八雲が赤い顔で私をぎゅっと抱きしめるから
なんだかまあいいかという気持ちになって
今更ながらもその背におずおずと腕を回した。
すると、八雲がぴくっと反応してさらに強く抱きしめてくれたので
私は幸せな気持ちでぬくもりを享受した。
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どうしてこうなった…。
ただ、八雲が晴香と出会って自分のせいで
晴香を宿命に巻き込んでしまったことを悩んでいるように
晴香だってそう思うこともあるんじゃないかなと
思っただけだったんですが…。
う~ん…。まさか結婚設定に行きつくとは…(汗)
プロットとか書く必要性を感じる今日この頃です…。
八晴はあの設定だからこそのCPだとは思うんですが、
もしそうじゃなくても晴香のドジっぷりには八雲が必要だと思うんだ^^
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