2010年5月22日土曜日

図書館戦争 甘いささやき(堂郁) 結婚後

【堂上side】

可愛い。綺麗だ。似合うぞ。

柄ではないそんな言葉を吐くのは、鈍い妻に愛情が伝わるように。
そして郁自身がその事を自覚するように。
さらには、母親の呪縛からいい加減解放されるように。根深いトラウマが癒えるように。

郁は恥ずかしいだの照れるだのと顔を真っ赤にさせるが、堂上は生憎止めるつもりはない。
周りにも過保護だとか甘いとか散々からかわれるが、開き直ってやったら大人しくなったので、これからも続けていくつもりだ。

郁が自分で柄じゃない、なんて言わなくなっただけ成長したと思いたい。
俺がそうさせたんだ、と言うのはつけあがり過ぎだろか。…柴崎あたりの影響も強そうな気がしないでもないので、何とも言えないが。

(もっともっと俺色に染まって、他の事なんて気にならなくなればいい。)
…なんて。
らしくない事を考えてみたりする。

小牧は俺の様子に笑いながら呆れているに違いない。
柴崎はきっと俺の真意に気づいているからか、からかうが決して止めろとは言わない。

(柴崎もなんだかんだと郁に甘いからな。)

手塚はそれにかなり渋面だが、柴崎は飄々としている。
曰く、私も堂上教官の過保護が移っちゃたみたいなんですよね—。まあ、元を辿ればあの子が可愛すぎるのがいけないって事でよくないですか?
と猫のような微笑みで言われた。
苦笑しか出来なかった堂上に柴崎はやっぱり呆れていたが。
だが、柴崎だって郁のトラウマを知る一人だし、きっと堂上の次ぐらいに郁が解放される事を望んでいるのは知っている。

(なぁ郁。お前いい加減自分を正当に評価しろよ。お前の取り柄は瞬発力とその俊足だけじゃないんだぞ。
―――俺の苦労もわかれバカ。)


【郁side】

堂上は郁に甘い言葉を頻繁に言う。何度でも言う。
特に可愛いとか綺麗だとかを特に。

郁だって嬉しいし、言ってほしい時もある。
だが、柄じゃないし恥ずかしいし照れるのも確かだ。
さらには態度だって甘甘なので、少し居心地が悪い。

人に過保護だとか甘いとか散々言われているのがわかる気がする。
確かにその通りで、しかも堂上が開き直っているので郁は尚更始末に負えない。
結婚してからますますそう感じる事が多くなった気がする。

(どうして私にそんな事…。)

少しは自覚しろ、と言われて久しいが、そんな事言われて鵜呑みする程郁には自分に自信がない。
堂上のフィルターがかかっている気がする。
小牧や柴崎あたりはそんな郁に溜め息を吐くが、そんな事は郁の知るところではない。

(篤さん無理してんのかなぁ…。)

だが、そんな事を無理して言う人ではないのは郁だって知っている。

結局郁の頭は堂々巡りになり、その答えがわかるのはさらに月日が経ち、教官職につく頃になるのである。


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もしかしたら続くかもしれない。
でも、今のところは予定はないです。

郁ちゃんの一人称が原作と違いますが、当ブログでは
ヒロインの一人称は基本的に《私》で書かせていただきます。

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