※左→←千←土
※これの続編です。
※もはやキャラ捏造
千鶴ちゃんが臆病で左之が可哀想です。
私が土方さん贔屓なのはいつものこと。
それでも良い方のみどうぞ。
千鶴の原田への態度がよそよししいことに、誰もが気づいていた。
「・・・あの、・・・原田さん、洗濯物、ここにおいておきますね」
「・・・左之さん千鶴になんかしたの?」
「・・・」
「あ、心当たりあるんだ。やらしいー」
「・・・」
沖田に何を言われても無言の彼は、最早千鶴しか見えてはいなかった。
原田はこのままではまずい、と二人っきりの場を設けて千鶴にお伺いを立てた。
しかし、そんな原田の様子が怖かったのか、それ以外の理由があるのか、
千鶴はその大きな瞳に涙を浮かべる。
さすがに焦った原田は千鶴をなだめるように頬を撫でてなんとか機嫌をとろうとする。
「千鶴?・・・泣くほど嫌だったのか・・・?」
「ち、違うんです・・・!・・・あの、びっくりしただけで!嫌なんかじゃ・・・!」
「じゃあ、なんでだ?」
「は、恥ずかしくて・・・」
「・・・それは、俺が恥ずかしいってことか?」
「違います!私が、あまりに原田さんにふさわしくないので・・・」
「そんなわけねぇだろ。お前は可愛くていい女だ。お前以外、俺にふさわしいやつなんているわけねぇだろ。・・・それに、そんなこと関係ねぇ。お互いが好きあってること以上に、恋仲に必要なことなんてないんだからな」
「・・・原田さん・・・」
観念したかのように秘めた想いを頬を染め、涙目に告げてくる千鶴に
欲情しない原田ではなく、その衝動のまま我慢できずに口付けた。
そのあまりにも情熱的で深い口付けに千鶴はまたもや原田避けることになるのだが、
その時の原田にはそんなことまったく予想もついていなかった。
* * *
千鶴と原田が、なんとか日常会話をできるまで復活した、ある日の朝のこと。
あの口付けでなんとか恋仲という関係を築けたが、
千鶴のあまりにも恥ずかしがり屋で照れ屋、さらには疎い様子を
なんとかせねばという気持ちを抱いていた原田は、
藤堂が慌てて走ってきて叫んだ言葉に絶句することになる。
「ち、千鶴!!き、昨日土方さんと一緒に寝たって本当か?!」
「え?!」
「・・・」
土方は我関せずでそのままお茶をすすっている。
対する千鶴は顔を真っ赤にさせ、もはや答えを告げているのも同然だ。
そんな二人の様子に、原田のとった行動は迅速だった。
すぐさま千鶴を脇に抱え、平助や新八の制止の声も気にせずに
二人だけになろうと原田の部屋に連れ込む。
壁際に追い込み、両腕を檻のようにし、逃げられないようにした。
「・・・、やっぱり、千鶴は土方さんが好きなのか?」
「え?!いえ、そんな、確かに私は土方さんを尊敬していますが・・・その、私なんかが恐れ多いといいますか・・・」
「・・・土方さんの方が好きか?・・・俺よりも・・・?」
「・・・わ、私が好きなのは、原田さんです」
「じゃ、俺と、土方さん、どっちが大切だ?」
「そ、それはもちろん、は、原田さんです・・・」
「だったら、なんで土方さんと一緒に寝てるんだよ?!」
原田の声にびくっと肩を揺らした千鶴は、涙目になりながらも答えた。
「・・・それは、・・・そのぅ、昨日、怖い夢を見て・・・」
「夢?」
原田の眉毛がぴくりと動いた。そんな仕草にも千鶴は怯えたように身を縮こまらせる。
「・・・頓所に来たばかり頃も、よく見てたんです。それで、なかなか眠れなくて・・・。そんな時、土方さんが声をかけてくださいまして、手を握って、一緒にいてくださったんです」
千鶴はその時のことを思い出したのか、今原田に怯えていたことも忘れたように
頬を緩ませる。
「そしたら、いつの間にか眠ってたらしくて。でも、もう怖い夢は見なくて。・・・それ以来、何かあるとついつい頼ってしまうようになって・・・」
「それで土方さんに懐いてたのか」
「・・・お仕事がお忙しい中、私にいつも優しく気を配ってくださって・・・甘えてしまったんです」
「・・・」
「すみません・・・。まさか原田さんに不快な気持ちをさせるとは思ってなくて・・・」
「・・・」
「もう、あまり土方さんには甘えないように、頑張りますね」
「・・・そうじゃないだろ」
「え?」
「なんで、そん時、俺んとこに来ないんだよ」
「でも、その、昨日は原田さんは遅番明けでお疲れだと・・・」
「お前の為だったらどんなに眠くても、疲れてても、だるくても、熱あっても、死にそうでも、
俺はお前のそばにいるっつの」
「え・・・」
「お前に何かあったら抱きしめるのは、俺の役目だろう?・・・それと同じく、お前が怖くて寝れなかったらお前を寝かしつけるのも、俺の役目だろうが」
「・・・あ、・・・」
「・・・恋仲だろ?そのぐらい、させてくれよ」
真っ赤になってはい、と頷いた千鶴にやっと原田は安心して心の奥底から安堵の溜息を吐きだした。
しかし。
そんな千鶴の行動は結局改善されなかったのである。
* * *
「千鶴は俺のだろうが!!!」
ここでは、一応千鶴は男ということになっている。
それなのに、こんな隊士たちにいつ聞かれるかもわからない所で
そんなことを大きな声で言っては、原田に男色の疑いがかけられてしまうでないか!
千鶴焦るが、そんなことを気にもしないのか、
原田は声の音量もそのままにさらなる噂の種を蒔く。
「は、ははは原田さん?!こんなとこでそんなこと言ってたら、周りの方に誤解されたまま噂になってしまいますよ?!」
「何が誤解なんだ?ホントのことしか俺は言ってねえぞ。・・・俺と、噂になるのは迷惑か?」
「迷惑なんかじゃないですけど!それとこれとは・・・!」
なんとかしなきゃ、でもどうしよう。
と千鶴がもう自分の手に負えず泣きそうになった時。
「千鶴?どうした?茶は?」
突然の土方の声に天の助け、と言わんばかりに千鶴は目を輝かせると
土方に駆け寄りその背に隠れ、抱きついた。
土方はそんな千鶴の行動を溜息ひとつで甘んじ、原田に視線を送る。
「千鶴・・?なんで土方さんに抱きつくんだ・・・?」
ショックどころではない原田は土方の
【何したんだお前】と鋭く攻める視線に構う暇はない。
「・・・だって、あの、その・・・。」
「・・・原田、無理強いはすんじゃねぇーぞ?コイツは人一倍怖がりで泣き虫だ。
大事なら、丁重に扱えよ。」
土方は余裕ない原田に呆れたように言うと
そのまま千鶴を抱きあげて自室へと戻っていった。
「・・・。」
これでも、大事にしているつもりだ。
大事で大切で、可愛くて、愛しくて、常に、自分が守っていたいと思う。
何より優先した。
千鶴の手伝いはもちろん、いつだって傍にいて共に行動した。
目を離して彼女が何か危ない目に合わぬように。
彼女が不自由しないように。
それでも。
千鶴も、土方も、今の原田を否定する。
自分はいったい何がいけないのだろうか。
これでだめならば、これ以上どうやって大切にすればいいのか。
原田には、もうまったく見当がつかなかった。
* * *
何やら騒ぐ声が聞こえる。揉め事のようだ。
何があったのかと覗いてみると、原田と土方が言い争っているらしい。
最近では何かと原田が土方に突っかかることが多く、
その元々の原因が自分であろうことになんとなく気づいた千鶴は
そんな二人の光景を見るたびに肩身の狭い思いをする。
しかしながら、土方はいつもそんな原田を諫めては
結局自分の思い通りのままにしてしまうので、
千鶴は今までその騒動に口を挟んだことはなかった。
いつもの原田ならそんな大人げない行動はしない。
だが、恋は盲目というか、千鶴のことに関しては驚くほどの執着を見せる彼は、
土方に自分の優位を示したいらしく、千鶴に突っかかった。
しかし。
「千鶴はどっちが正しいと思う?」
「え?・・・私は・・・。」
千鶴は考えるそぶりなく土方の肩を持つと、周りも落胆した。
「千鶴はなんでいっつも土方さんの味方なんだよ!」
「・・・ぅ・・・。その、だって土方さんは嘘をつくような方じゃありませんし・・・。」
「千鶴は土方さん信者だからなー。」
「ホント、あんな鬼副長のどこがいいんだか。一番最後に懐いたのに、一番懐いてるなんてね。」
沖田はにやにやしながら原田を煽るように顔を向ける。
「土方さんなんて常に眉間に皺寄ってるし、怒鳴ってるし、雰囲気からして怖ぇし・・・。千鶴って大物だよな。」
藤堂は本当に不思議そうに首をかしげる。
「・・・確かに最初は土方さんは怖い人だと思ってましたけど・・・。でも、本当は優しい人だって気づいたんです。」
「土方さんが優しいのは君にだけじゃない?」
「あー確かに千鶴には甘いしな~土方さん。」
「いいえ!そんなことありません!!」
むきになって否定する千鶴に、どんどん機嫌が悪くなっていく原田。
土方はそんな2人を横目で見つつ苦笑し、千鶴の髪をぐしゃぐしゃにするように撫でた。
「わ!ひゃあ・・・!ひ、土方さん?!」
私別に土方さんのこと悪く言ってませんよ!?っと訴えたそうな瞳で
こちらを見つめる千鶴は、原田が不機嫌なことすらも気づいていないのだろう。
原田の機嫌を損ね、どうせ夜また土方に泣きついてきて、
さらなる悪循環を呼ぶだろうことは想像に難くない。
土方的にはそれでもなんの文句もないのでいいが、
千鶴は原田の嫉妬に対応が大変だろうに。
馬鹿なやつだなと思いつつも、しかし、土方は敢えて言わずに
苦笑しながらありがとよ、とだけ告げる。
千鶴は目を瞬かせ、少し頬を染めると、
嬉しそうに、幸せそうに柔らかく微笑んだ。
→後編へ
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中途半端な終わり方になった気がしないでもない。
でも、これが一番区切り良かったんだ。
前編とかなり間があいてしまった・・・。
おかしいな・・・前編後編でおわるはずだったのに・・・。
左之の受難は続きます。
土方さん贔屓な私ですが、ちゃんと左之さんにも愛はあるんです本当です。
いつになるかわかりませんが、のんびりと続きは書きます。
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