※ゲーム本編中
夜更けのことである。
隊務が終わったのか、原田が千鶴の部屋を訪ねてきた。
いきなりのことで千鶴の体温は上昇する。
自分の顔の色が予想でき、今が夜で良かったと思うばかりである。
「千鶴、明日お茶しに行かねぇか?」
「あ、あの、私、土方さんに許可を・・・。」
「それならもうもらってる。だいたい今更だろうが。もうとっくにお前の監視はとけてるだろ。」
「でも、あの、私、皆さんの手伝いをしなくちゃいけないので。」
「なら俺も手伝う。」
「いえ、そんな!原田さんの御手を煩わすことでは・・・!」
「なに遠慮してるんだよ。俺だって家事くらいそこそこはできるぜ。」
「いいえ、大丈夫です。私1人でやれます。だからあの、なら平助くんとか永倉さんも誘ってみません?みんなで行った方が楽しいですし!」
「平助は明日巡察。新八は島原行くってはりきってた。」
「・・・。あ、じゃあ、永倉さんと一緒に原田さんも・・・。」
「・・・千鶴。行きたくないなら行きたくないと言っていんだぜ。」
原田の悲しそうな声音と表情に千鶴は慌てた。
「え?!いえ、別に行きたくないわけでは!!」
「んじゃ、行けるよな。」
「え?!」
「準備しとけよ。んじゃ、また明日な。お休み千鶴。」
「え、え、ちょっと待ってください!原田さん?!」
先ほどの表情とは一変した原田の様子に目を瞬かせている千鶴を尻眼に
原田は部屋から出て行った。
有無言わさずというか、少々強引なやり方で一方的な原田とは珍しい。
沖田だったらいつものことだが。
千鶴は少し赤くなった顔を、一瞬の後にさーと青に変えると、一目散に走り出した。
「土方さんっ・・・!!」
「千鶴?」
千鶴は体当たりするように土方に走り寄り、土方の腕の中におさまると、ほっと息をついた。
駄目なのだ。原田の傍にいると心が掻き乱される。
言ってはいけない本音を、してはいけない行動をとってしまいそうになる。
だから土方の腕の中に隠れたくなるのだ。
この人の腕の中ならば自由に息が出来るから。
安心して身をまかすことができるから。
土方の傍にいると安心する。
千鶴の様子に戸惑っていたような土方だったが、やがて苦笑する。
「どうした?お化けでも出たのか?」
「・・・違います。・・・子供扱いしないでください・・・。」
「子供だろ?・・・隠れて逃げてるように見えるぞ。」
「・・・違います。・・・土方さんが、・・・。」
「俺が?」
「俺が?」
「・・・内緒です・・・。」
「俺に隠しごとたぁ偉くなったもんだな?千鶴?」
「・・・。」
あなたが、いつも、いつも優しいから・・・。
その腕の中に、逃げたくなる。
弱い自分を受け入れて、
それでも責めもせず、何も言わず、
そっと抱きしめてくれるから。
だから。甘えたくなるのだ。
土方がゆっくりとした手つきで髪を撫でる。
千鶴はその仕草に眠気を誘われるように目を細めた。
最初は、厳しくて怖い人だった。
視線が鋭くて、目を向けられる度に、なんど震えたことか。
でも、あの綺麗な横顔と、手の温かさを知った夜から、そんな印象はすべて変わった。
厳しいのは、他人を、何より自分を、律しているからだ。
けして厳しいだけではない。
侍を、本物の武士を目指しているからだ。
自分の志を守る為に、必死に体を張っているだけだ。
何より、ただ厳しいだけの人ならば、どうしてこんなにも新撰組隊士が集まるというのだろう。
ここまで、みんながついてくるというのだろう。
怖いのではない。
あれは誇りを守っているのだ。
視線が鋭いのは、危険を探る為だ。
新撰組を。隊のみんなを。守る必要があるからだ。
この人になら自分はすべてを預けられる。
そんな全信頼のもと千鶴は土方の胸にもたれかかりそのまま眠りについた。
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視線が鋭くて、目を向けられる度に、なんど震えたことか。
でも、あの綺麗な横顔と、手の温かさを知った夜から、そんな印象はすべて変わった。
厳しいのは、他人を、何より自分を、律しているからだ。
けして厳しいだけではない。
侍を、本物の武士を目指しているからだ。
自分の志を守る為に、必死に体を張っているだけだ。
何より、ただ厳しいだけの人ならば、どうしてこんなにも新撰組隊士が集まるというのだろう。
ここまで、みんながついてくるというのだろう。
怖いのではない。
あれは誇りを守っているのだ。
視線が鋭いのは、危険を探る為だ。
新撰組を。隊のみんなを。守る必要があるからだ。
この人になら自分はすべてを預けられる。
そんな全信頼のもと千鶴は土方の胸にもたれかかりそのまま眠りについた。
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びっくりした。
まさか、原田が自分にあんなことを告げてくるとは想像もしていなかった。
ただ、驚いただけだ。
嬉しくて、驚きで信じられなくて。涙が、溢れただけだ。
でも、原田を傷つけてしまっただろう。
あの、原田の悲しそうな歪んだ顔が頭から離れてはくれなくて。忘れられない。
眠れなくて、千鶴は溜息を吐いた。
ふと、明かりがともっている場所に気づき、立ち上がった。
「・・・千鶴?まだ寝てなかったのか?」
「・・・土方さん・・・。」
「・・・はぁ。・・・また寝れねぇのか。」
「・・・はい・・・。」
「・・・たく・・・。仕方ねえな・・・。・・・こっちこい、千鶴。」
導かれるまま土方の腕の中に入ると、千鶴はたまっていたものを吐き出すかのように泣きだした。
「・・・ホントに泣き虫だなぁ、お前ぇは・・・。」
「・・・ぅっ・・・ひ・・・。」
「・・・つらいなら、やめちまえって言っても聞かねぇくせに。」
「・・・ご、ごめんなさ・・・っ・・・。」
結局この人を頼ってしまう自分は弱虫で泣き虫だ。
原田よりも安心できるなんて、ますます原田を傷つけるだろうか。
でも。
この腕がなければ、自分は。
目覚めると、役者のように綺麗な寝顔が目の前にあった。
いつの間にか眠ってしまったのだろう。
もはや慣れてしまったこの光景を、千鶴はただ呆然と眺める。
千鶴が気を失うようにして泣きながら眠った後は、土方はどんなに職務がたまっていようと
そのまま千鶴と一緒に寝る。
そうするのが当然のように。
まるで、そうしなければ千鶴が起きてしまうのを知っているかのごとく。
いつだってこの人は自分を離さずに抱きしめたままでいてくれる。
まるで何からか守るように。
嫁入り前の娘が
はしたないことだと、わかっている。
でも、もう自分の一部のように感じられるこの腕を、体温を、どうして手離せるというのだろう。
甘えている自分には気づいている。
土方に迷惑をかけていることも、承知の上だ。
でも、どうしても。
******************************
最近島原へ寄りつかない原田が珍しく飲もうと誘うので来てみれば、
しょっぱなから一気飲みである。
その後も1人無言で飲む原田にさすがの永倉といえど声が掛けられなかった。
とりあえず自分も黙々と飲んでいると(こんなに不味い酒を飲んだのは久方ぶりだ)
原田はもう一升瓶呑みほしたのだろうか。
ぷはぁとオヤジ臭い息を吐いた。
さらに注文を頼む原田に、制止の意味も含めてなんとか会話らしい言葉を投げかける。
「今日はえらく飲むな、左之」
「・・・うるせえ。好きに飲ませろ」
「うわ機嫌悪・・・」
その後も沈黙が流れたが、ふと目が合うと、原田は自嘲気味に話しだした。
「・・・口説いたらよぉ・・・泣かれた。」
甘えている自分には気づいている。
土方に迷惑をかけていることも、承知の上だ。
でも、どうしても。
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最近島原へ寄りつかない原田が珍しく飲もうと誘うので来てみれば、
しょっぱなから一気飲みである。
その後も1人無言で飲む原田にさすがの永倉といえど声が掛けられなかった。
とりあえず自分も黙々と飲んでいると(こんなに不味い酒を飲んだのは久方ぶりだ)
原田はもう一升瓶呑みほしたのだろうか。
ぷはぁとオヤジ臭い息を吐いた。
さらに注文を頼む原田に、制止の意味も含めてなんとか会話らしい言葉を投げかける。
「今日はえらく飲むな、左之」
「・・・うるせえ。好きに飲ませろ」
「うわ機嫌悪・・・」
その後も沈黙が流れたが、ふと目が合うと、原田は自嘲気味に話しだした。
「・・・口説いたらよぉ・・・泣かれた。」
「・・・あー。・・・ご愁傷様。そりゃ脈なしだな。」
「・・・綺麗に泣くんだよアイツ。びっくりしただけで、迷惑なんかじゃないって言ったが・・・。」
「・・・綺麗に泣くんだよアイツ。びっくりしただけで、迷惑なんかじゃないって言ったが・・・。」
「・・・あの子は優しいからなぁ。」
「・・・だよな。・・・やっぱり、オレに気ィ遣ったんだよな・・・。」
(いや、別にそんなことわかっていた。
わかってたけど、なんでわざわざ自分で口にしなきゃいけねーんだ?)
ふつふつと怒りがこみ上げた。
ふつふつと怒りがこみ上げた。
生き場のない怒りは、短気な原田らしくすぐに爆発する。
「この新八クソ野郎!!!」
「は?!振られたのオレのせいにすんじゃねーよ!」
「うるせぇ!まだ振られてねぇ!!」
「馬鹿か!もう大人しく諦めろ!」
「お前が馬鹿だ!諦められるかってんだ!!」
そう、諦めきれるか!
これと決めた、唯一の、きっと人生最後で最高の女だ。
誰にも譲る気などないし、渡すはずもない。
絶対に、自分のものにしたい。
千鶴が、欲しい。
これと決めた、唯一の、きっと人生最後で最高の女だ。
誰にも譲る気などないし、渡すはずもない。
絶対に、自分のものにしたい。
千鶴が、欲しい。
新しい酒をそのままラッパ飲みで水のように飲む。
永倉があきれたような、困惑したような、諦めたような、複雑な顔をしたが、そんなことには構っていられずに気のすむままに飲んだ。
「・・・あいつは土方さんにべったりだろう。」
「は?千鶴ちゃんが土方さん贔屓なのは今に始まったことじゃねぇだろうが。」
「・・・そうだけどよ。」
原田はおもしろくなさそうに永倉を睨む。
永倉はそれに慌てて八つ当たりはもう勘弁、というように話を逸らした。
「いや~。それにしても、いい月夜だな。」
「・・・」
逃げた永倉が気に食わないような気もしたが、確かに月が素晴らしく綺麗だったので溜飲を下げる。
こんな月を、いつか千鶴と一緒に見れたらいい。
結局どこまでも千鶴一色の自分に呆れつつも、今度の満月の晩は団子でも買ってきて月見に誘おうと、酔っぱらった頭の隅で決意した。
→NEXT
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このままでは1月の更新がやばいということで、慌てて途中でUP。
続きはあまり期待せずに気長に・・・。
更新が少なかったり遅かったりするかもですが、今年もよろしくお願いします!
アダルト組大好きだ!!
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