2011年1月13日木曜日

貴方の傍に。

※土千+大鳥+島田
※五稜郭辺り


「千鶴っ!茶だっ!」

土方の声にいつもはいっと素直に返事をする声は聞こえない。
もっとも、いつもだったら土方が何も言わずとも、
そろそろ茶が欲しいなというタイミングで千鶴が運んでくるのだが。
しかし、何故か今日に限ってはパタパタと歩き回る足音も、掃除をしている気配も感じない。
さすがにおかしいと思い、島田に確認を取ろうとしたが、島田の姿も見当たらない。
自然眉間にシワが寄ってきたところで、立ち上がって千鶴を探すことにした。




「雪村君、そろそろ休憩に入ったらどうですか?あらかた片付いてきましたしね。」
「あ、島田さん。いえ、もう少しなので一気に終わらせちゃおうと思ってたんです。」
「そうですか…。でも無理はしないでくださいね。」
「はい。ありがとうございます。」

二人がほのぼのしている所に、にこやかな大鳥が入ってくる。

「雪村君お疲れ様。すまないね。こんな汚い所の掃除を頼んでしまって。」
「いいえ。お役に立てて嬉しいです。」
「そう言ってくれると助かるよ。」

ふと、大鳥は何かに気づいたように一瞬黙り、そしてその一瞬後には楽しそうな笑みを浮かべた。

「…でも、雪村君、そろそろ土方君が君を求める頃じゃないかな。」
「え?」
「ほら、聞こえるだろう?」

千鶴は首を傾げたが、その瞬間声は響いた。

「千鶴—っ!」
「は、はいっ!」
「…ここにいたか。ったく、手間ぁかけさせやがって。」
「す、すみません!何かご用でしたか?」
「…ちょっと来い、千鶴。」

有無言わさずの土方の態度に若干慌てると、千鶴は大鳥と島田に頭を下げて土方の後を追った。

「はいっ!すみません。大鳥さん、島田さん後でまた来ます。」

千鶴は頭を下げていて気づかなかったようだが、
大鳥と島田は土方の眉がぴくりと動いたのがわかって苦笑した。

どうやら姫君を随分と独占しすぎたらしい。
主自らのお出迎えに午後の手伝いはないだろうことを悟り、少し惜しく思う。


二人が去った後、大鳥はわざとらしくため息を吐いた。

「やれやれ。土方君の独占力にも困ったものだね。…さすが雪村君と言った所かな。」

大鳥の言い分に賛同するように島田はどこか嬉しそうな苦笑を深めた。




二人が部屋に戻ると直ぐに千鶴は何も言わずにお茶を入れにいった。
土方に目線で促され、そのお茶を二人で静かに味わい、ホッと息をつく。
そして土方の機嫌を窺うように上目遣いで口を開いた。

「…あの、土方さん。すみませんでした。それでご用事の方は…?」

土方はそんな様子の千鶴を見て一瞬躊躇した。
そして千鶴と目線を逸不本意そうに呟く。

「…千鶴。お前は俺の小姓だろう。余計なことしてねぇで、俺の部屋で書類の整理でもして傍に居ろ。…姿が見えねぇと心配で敵ねぇだろうが。」

千鶴は土方の言葉に目を丸くした後、頬を染めて嬉しそうに微笑む。

「…はい、すみません。これからは土方さんの御手を煩わさぬよう、お傍にいます。」

土方はそんな千鶴の健気な様子に苦笑すると、千鶴を抱き寄せる。

「あぁ…傍に、居てくれ。」

我が儘だとわかっている。
でも手放せないのだから自分も堕ちたものだ。
だがそれでも構わないと思っている自分に気づき、土方は苦笑する。

「本当敵わなねぇな。お前には。」
「え?」
「…いや、何でもねぇよ。…愛してる。千鶴。」
「…はい。…私も、愛しています。」

自分の腕の中で本当に嬉しそうに、幸せそうに笑う女は、端から見たら不憫に見えるのだろうか。勝ち目などない戦の最中で隊を率いる自分の腕の中で、たったの一言で、こんなにも幸せに笑える女は。

千鶴が聞いたら否定して怒るだろうことを思って土方は千鶴を抱く力を強めた。


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応援バーナーの原田さんのセリフを土方さんに言わせ隊っ!と思ったら出来たもの。

島田さんもおいしいが、やっぱり大鳥さんが羨ましすぎるっ。
あの二人の一番いいとこもってったよね・・・。
あああ土千大好きだ!

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