※八晴
※御子柴+八雲(自己補完あり=捏造設定あり)
「・・・そうきたか・・・」
いつの間にか行われるようになった学生とのチェス勝負。
始まりはただの気まぐれか、もうよく覚えていない。
ただ、彼はレポートでもわかるように本当に面白い思考をもっている。
何回かゲームしていてもその戦略をよませない。
そういう意味で、御子柴にとって斉藤八雲というその学生は
非常に興味深い研究対象だった。
チェスの勝負はもうこれで片手以上になるが、
八雲と御子柴の間では明確な約束があるわけではない。
ただ八雲がふらっと研究室に現われたり、
御子柴が講義中にじっと八雲を見つめたりする、
などの行動があるだけだ。
(もっとも、八雲が講義に出ていることは稀だが)
しかし、例外はある。
矢口という助手が研究室に顔をだした場合
あるいはもともと訪れていた場合は
八雲はゲームの途中で帰ったり、
研究室を訪れても無表情でそのまま踵を返してしまうのだ。
以前はそうでもなかった。
何回か言葉を交わしていたこともあるし、
勝負が長引いて詰まった時にコーヒーやお茶をだして一緒に休憩したこともあり、
途中御子柴に言われて代わりに矢口が勝負したこともあった。
別に矢口を嫌っているというわけではなさそうだし、
特に2人の間に何かあったのか、と矢口に尋ねてもないという。
というかそもそも、この2人はそこまで関わらないそうだ。
八雲の次の手を待ちつつ考えていると、扉を叩く音が聞こえ、
失礼します、と扉が開くのがわかった。
もしかして緊急の仕事が入り、あのバイアス女が呼びにきたのだろうか、
と久々の勝負に水をさされたことを不快に思いつつ目を向けると、
そこには御子柴の想像を裏切る人物がいた。
「八雲君!」
やっぱりここにいた、と笑顔を浮かべるのは
声の高さ、服装、容姿などから見ておそらく女性だが、
あのドアホ女刑事ではない。
八雲の名を知っているようなので八雲の知り合いか、
と御子柴が八雲をうかがうと、八雲は眉間に皺を寄せつつ
まだ次の手を考えたままだった。
彼女が来たことには気づいているのだろうに、
反応がないことに腹を立てたのか、その女性は
むっとした顔で八雲のわき腹をつついた。
とたん、びくっと体を震わせた八雲は、
椅子から立ち上がり、逃げるように一歩進む。
「・・・いきなり何をするんだ、君は」
「八雲君が返事をしないのが悪いんだよ」
「僕は考えことをしているんだ。優しく見守るという選択肢は君にないのか」
「考えごとってたかがチェスじゃない」
「たかがとはなんだ」
御子柴もそれにたいして思うことがないわけではなかったが、
めんどくさい御子柴はそのまま2人の様子をみていた。
「もう。後藤さんから電話がきたよ。携帯、おきっぱなしにしないでよ」
「充電してたんだ」
「・・・本当に?」
「もちろん」
じゃれあっている2人の様子に今回のゲームはまた次回にお預けだろうか、
とせっかく優位だった御子柴は内心面白くない。
「・・・次の手は?」
「ああ、では、これで」
御子柴が不貞腐れて促すと、あんなに考え込んでいたはずの八雲は
最初から決まっていたかのように駒を動かした。
「・・・」
しかも、そこにきたか、という超難関の手口だ。
御子柴がうなっていると、八雲はどうでもよさそうにあくびしつつ
次のときまで考えておいてください、と
すたすたを扉へと歩いていく。
女性はにこにこしながら御子柴に会釈する。
そして小声でつぶやいた。
「御子柴先生、今度、私の確立の計算もしてくださいね」
それじゃ、と言うだけ言うと女性は八雲の後をあわてて追いかけていった。
次の手を考え駒を動かした御子柴は、
またか、と御子柴は表情をゆがめた。
一度講義中に想いが叶う確立も計算が可能だ、
と告げたのがまちがいだった。
それが噂となり、そしてその確率が結構あたるものだから
恋の相談所的効力を持つようになってしまったのだ。
数学に興味を持つのはすばらしいが、
そうしたお遊びに自分がいちいち付き合わされるのは面倒だった。
なにより、女子学生の勢いは付き合っていて疲れる。
若いだけあるというものだ。
あのドアホ馬鹿バイアス女の相手も疲れるが、それとはまた違う疲れだ。
純粋に数学としての楽しみに浸ってくれる矢口とは正反対だ、
と考えつつ、そういえば、どうして矢口がいるときは勝負をしないのか
聞くのを忘れた、と御子柴は髪をぼさぼさにしながら頭をかいた。
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御子柴よんでかなり妄想力が刺激されました。
ネタがあふれるよ!
ただ、よめないというか、まだよく把握できていないので
御子柴さん視点で書きにくいのが難点です・・・。
御子柴さん関係はことわざを使いたいのですが、
馬鹿なのでなかなか・・・。
地味に続きます。
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