※八晴
苦い毒にも甘い薬にもなるものって何だと思う、と彼女は問うた。
僕は何も答えず、ただ沈黙を守った。
僕が話を聞いていないと思ったのか、彼女は怒って頬を膨らませたが、
僕はそんなことは気にせずにただ思慮に耽った。
もっとも、彼女には僕が変わらずに
本を読み続けている姿にしか見えなかっただろうが。
彼女の機嫌を損ねることは僕の本意ではなかったけれど、
彼女はよくも悪くも感情豊かな人だったので
それはそれほど珍しいことではなかった。
僕が考えこんでいた―――彼女にしてみれば本を読んでいただけ―――
頭をあげて思いつくままに告げると、それが先ほどの謎掛けの返事であると
一瞬の間の後に気づいた彼女は、笑顔で首を横に振る。
彼女の機嫌が直ったのはいいが、
答えを違えてしまった僕は内心面白くなかった。
彼女が、僕には絶対にわからない、と自信満々の態度をとるのも気に食わない。
眉間に皺を寄せた僕に降参を迫る彼女は、
いつもとは逆で自分が優位なのが嬉しいのか、
きらきらと輝くような瞳でこちらを見ていた。
そんな彼女の様子が子供みたいでおかしくて、僕は笑った。
そして、ああ、まるで彼女のようだ、と思った。
僕を絶望のどん底に落とし地獄に導くことも、
僕の暗い闇に染まった心を救いあげることも、
全て彼女にしかできない。
「・・・ああ、君か」
僕が感じたことを独り言のようにつぶやくと、
彼女はわけがわからない、というように僕の言葉に首を傾げた。
僕はそんな君を引き寄せて唇をよせ、
まるで中毒性のあるクスリのような、甘いお菓子のような、その愛を貪った。
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たまには違う雰囲気のも書いたいんです。
・・・書けるかはともかく・・・。
(いつもは会話中心なので、会話を少なくしてみたんだぜ!)
謎の答え、これでわかりましたでしょうか・・・。
ああ・・・もっと上手に書けるようになりたい・・・。
個人的に会話中心の方が読みやすいし書きやすいのですが、
皆さんはどちらがお好みでしょうか?
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