※ゲーム本編中(ノーマルルート?)
※捏造補完話
※このシリーズのつもりですが、読まなくても大丈夫なはず。
※CPなし
例えば、そう。
日常の些細な会話や戦いの中のほんの一瞬の呼吸とか。
包んでいる空気とかどこか違う表情で。
思い知らされるのだ。
私は部外者で、仲間にはなれないのだと。
思い上がりも甚だしい。
私は望まれてここにいるわけではない。
本当は、ここにいてはいけない存在なのだ。
ただ、女だという同情や父様のことで少しでも役に立つからと、仕方なく生かされているだけ。
どんなに月日が経とうと、どれだけ距離が縮まっても。
私を切り捨てることなど、彼らにしたら一瞬だ。
私は荷物だ。
その扱いは重々承知している。
彼らの迷惑にはなりたくない。
日々の掃除や洗濯、食事の支度や片付けなどの雑用をやったところで、
自分ができることなどたかがしれているけど。
私は彼らの為に、何ができるのだろうか。
いっそこの身を切り裂いてもらえば少しは彼らの重荷は減るのか。
—嗚呼。情けない。
自分が彼らの為にできることが、彼らの手を血に染めることだけとは。
ふと、前にもこれに似たことを思ったなと昔を思い出した。
あの時はただ殺されたくない一心だった。
父を見つけるまで、それまでは、死ぬわけにはいかなかった。
—いつからだろうか。
ただ自分の保身ではなく、純粋に彼らの為にできることをしたいと思うようになったのは。
彼らがくれた、彼らとの思い出は優しく温かいものばかりで。
手放すのはあまりにも淋しくて。
私も彼らに何かを返したくなった。
自分が彼らに何か返せるものがあるとも思えないのに。
私は愚かだろうか。
つらつらそんなことを考えつつ掃除をしていると、土方さんの部屋から話声が聞こえた。
「…鬼の副長ともあろう方がほだされましたか。」
「…俺はまだ切れる。…問題はあいつらだろう。」
「どうでしょうね。まだ、と言っている時点で怪しいものですが。」
「…。」
「斎藤君も外出許可の進言したようですし。…藤堂君は元から優しく真っすぐな子ですからね…。年も近いしまあ無理だとして、沖田君は大丈夫でしょうが、彼の問題は体調ですね。無理をしては身体に障ります。…あとは原田君と永倉君ですか。…あの二人は頑固ですからねぇ。自分の納得のいかないことには従わないでしょうし…。しかもどちらも女子供に甘いですから除外して…。監擦方の山崎君と島田君には向かない仕事ですね…。源さんは自分の孫か子供を見るような目つきですので、任せるのは酷ですねぇ。局長なんて以っての外ですし。…そうなると…やはり、私か土方君ですか。」
「…俺が、やる。」
「…汚れ仕事ばかり貴方が背負うことになってしまいますねぇ…。」
「…覚悟の上だ。」
「そうですか。」
「ああ。」
「…こう言ってはなんですが、皆多分同じ気持ちですよ。」
「…?」
「…いつでも殺せるように、覚悟しているということです。」
「…。」
「貴方の命令次第、と言った所でしょうか。…彼らは曲がりなりにも新撰組幹部です。…心のどこかに、ちゃんと刀を持っているのでしょう。…誰に頼んでもきっと…。」
聞いていられなかった。
音を立てずに逃げ出すのが精一杯だった。
それ以上聞くのが怖くて私は震える身体を叱咤してその場を離れた。
彼らの、様子にも気づかずに。
「…同じ傷を背負いますが、彼らは実行しますよ。…今なら、まだ、ね…。」
「…。」
「…さて。途中までしか聞いてないようですが、まあいい脅しにはなったでしょう。」
「…山南さん?…っ!まさかっ?!」
「えぇ。貴方はあまりにもその身を許し過ぎて気づけなかったようですが、雪村君が聞き耳をたてていたようです。まあ、聞かれてまずい話ではなかったので放っておきました。」
「…あんたって人は…。」
「…私は事実を聞かせただけです。…これ以上踏み込まれてはつらいのは隊士達ですよ。…一線は、必要です。」
「…あんたは、本当に憎まれ役が得意だな。」
「…土方君は甘いですからね。私が抜かりなく後始末しているだけですよ。」
「…そうか。」
「ええ。」
私は、知らなかった。
途中で逃げてしまったから。
彼らの瞳にも口調にも雰囲気にも、悲しみが忍ばれていることに。
気づくことができたなら、もしかしたらこれから歩む道が何か変わったかもしれないのに。
私は、自分のことで精一杯で、気づくことができなかったのだ。
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私的に、新撰組として、武士として、
どんなに親しくなっても千鶴を殺す覚悟を持っていて欲しいと思う反面、
千鶴ちゃんには甘甘で優しすぎるくらい過保護だといいな
という矛盾した思いがあります。
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