2015年3月2日月曜日

君が好き。だから。


※戦ワル(ティファレト×ラン←ラスティン)
※ぴくしぶUP済み


タイトルの続きは冒頭でもいいけど、最後の台詞でも可。






俺はあの男が大嫌いだ。

そりゃ、確かに顔は人間じゃないみたいに整ってて綺麗だし、
纏う雰囲気は気品があって、動作も男なのにどこか色っぽい。
噂に聞く限り、腕っ節は強くないみたいだけど、魔法とか占いの腕は認めてやってもいい。医療や占いに従事しているのだから、医術や魔術の知識だって豊富だろうし、知恵も回るのだろう。
性格は腹黒くてひねくれてるし、最悪だけど。

「ねえ、ラスティンはなんでティファレトに突っかかるの?」

アネモネの花のように美しい藍の瞳で俺を見つめてくる彼女には悪いが、どうしても俺はあの魔法使いとは仲良くなれる気がしない。
彼と俺との仲をどうにか取り持とうと頑張る姿も可愛いし、そんな彼女に免じて俺も妥協してあげたい気にもなるが、やっぱりどう頑張っても無理だ。
この男と仲良く語り合ったり冗談を言い笑い合う自分が想像できない。

まあ、もし戦いの中でこいつしか味方はいない状況とかだったら背中を預けられるぐらいには信頼というか、心は許してるけど、普段の生活の中ではできれば関わりたくはない。

「だってさー。嫌いなんだよ」

「どうして嫌いなの?」

こてん、と首をかしげて、俺の機嫌を伺うように尋ねてくる姿は本当に俺のものにしたいぐらいに文句なしに可愛い。

ああもうくそう。どうしてもっと早く動かなかったんだよ、俺は。
そうしたら、こうもむざむざと、むかつくあいつに彼女をとられることもなかったのに。

育った故郷をなくし、父親を殺され、母親とは離れ離れになり、さぞ辛く悲しい思いをしたに違いない彼女。
それでもなんとかその過去を乗り越えようと、鍛練に励み、一生懸命魔剣を制御しようと努力していた。
勉強も熱心だったし、めんどくさい雑用も真面目にこなしてた。

自分に自信がないのだろう彼女はすぐに謝罪の言葉を口にしていたし、迷惑をかけたくないだとか遠慮がちだった。
剣を持って戦うのがふさわしくないぐらい、彼女は優しく純粋な普通の女の子だった。

そんな彼女が、恋をした。その相手が俺だったのなら、なんて幸せだったのだろうと、思わずにいられない。

笑った顔は可愛いし、揄い甲斐がある彼女と一緒にいるのは楽しかった。
頑張り屋な彼女を支えてあげたいと思ったし、誰かに傷つけられているのなら助けてあげたかった。

冗談交じりで口説いたこともあったけど、彼女は真っ赤になってしまって、戸惑っていたから、まだまだ愛とか恋とかは早いのかなーとか考えてた。
少なくとも、彼女の心の傷が癒えて、魔剣云々の問題の解決が先かなーとかのんきに思っていたわけだ、俺は。

正直、そんなバカで愚鈍な俺を誰かに殴って欲しいね。

彼女の瞳を写したような宝石が彩る指輪を見た日には、俺は自分の目を疑った。

いつの間にか彼女はあの魔法使いと心を交わし、
彼のモノになり、彼にだけ甘く蕩けそうな顔を見せる。

なぜあの顔が俺に向けられたものではないのかと、嫉妬で狂いそうだ。

もともといけすかない腹が立つ奴だと思ってたけど、もうあの野郎と仲良くなれる日は一生訪れないだろう。


「そりゃ、好きな女の子とられちゃったんだから、許せないだろう?」

「え?」

飲み物を飲んで少しの時間を稼いだ俺が、ようやく先ほどの問いに答えると、彼女はわけがわからないと言ったような顔で瞬きを繰り返した。
一体彼女はどんな顔をするのだろうか。
鈍い彼女のことだから、過去の女性の話だと思うのだろうか。
流されてしまうのは悲しいから、そこから頬にキスをしたら、この想いは伝わるのだろうか。

(―――ああいっそ、奪ってしまおうか)


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