※八晴
※結婚後(子供有)
ここは自己満足よろず2次創作非公式ブログです。 原作者様、出版社様、その他関係者様とは全く関わりのない赤の他人が管理しております。 ネタバレやキャラ崩壊もあると思いますが、御覧になる際は自己責任でお願いします。
「絵里。待て!」
高科は困ったような顔で絵里の手を掴んだ。
ような、とつくのは彼と一緒にいる年月が1年以上の者じゃないとわからないような微妙な変化だからだ。
絵里は高科と3年程一緒にいるが、高科の些細な表情の変化までわかるようになったのは2年経ってやっとだった。
「なんですか。」
絵里は声が震えないように噛みつくように顔を上げた。きっと涙目なのは気づかれている。
(悔しい。)
「悪かった。すまない。」
「…。」
だから泣くなと言われた気がした。
こっちだって泣きたくて泣きそうなわけじゃない。
ますます悔しくなってさらに涙が溢れる。
高科が慌てたように絵里にハンカチを渡す。
アイロンがけも完璧なこの彼の弱みはいったい何なんだ、とこんな時にふと思った。「…手、放して。」
とりあえず大人しく受け取る。
「なんで最近、上の空なんですか。」
「…それは、…。」
いつもは別に、と誤魔化される質問は、絵里の涙目が利いているのか、答えを貰えそうだ。
「なんかあったんですか。…仕事とかは言えないのは知ってますけど。…私に関する事なら言ってください。」
高科がまた言いにくそうに言い淀んだ。
絵里がまたもや逃げようとすると、高科もまた慌てて引き止めた。
「待て!言う!言うから逃げるな!」
だが、そんなことは却下だ。はぐらかさる気がバシバシする。「…絵里…。」
「…わかりました。じゃ、もういいです。これ以上聞きません。…ごめんなさい。今日は帰りす。」「絵里っ!だからちょっと待て!」
「…。」
ジト目で上をみやげ睨みながらいるといきなりのキスがきた。「…人がプロポーズしようって時に…あんたは…。」
…路上でするような男だったろうか。
顔を赤くしながら口元を被うと、ヤケクソに高科が呟いた。
不意打ちを食らって黙っていると、高科が屈んで目線を合わせてきた。
「…高科さん、ここ道路沿いです。」
しかもなかなか大きい国道だ。人が見ててもおかしくない。「だから場所変えようと言っただろう。」
「…俺だって予想外だ。あんたがあんな反則するからだろう!」
「…反則…?」
絵里は首を傾げて考え込んでいる様子だったが、わからないなら高科はそれで構わなかった。教える気はない。あれを武器にして何度もされたら堪らない。
「…あなたは高科絵里になる気はあるのか。」
そんなの決まっている。
「あります!」
即答すると、また高科からの不意打ちのキスだ。…今度は意外に深く長かった。もう無理!こっちとそっちの肺活量を考えてっ!そしてここは路上だから!
背中を軽く叩いて訴えると、やっと高科は止まった。…端から見たら、絶対抱き合ってるバカップルにしか見えない。
一人で立てなくて寄りかかっていると、高科が支えてくれた。
「高科さん?!」
「…移動しましょう。」
どうやら高科も状況を把握して我に返ったらしい。
一見無表情だが、これは相当照れている。だが、この状況も相当なはず。
「わかりました!わかったからおろして!」
「…歩けるのか。」
「…いえ、あの、もう少し休んだら…。」
あんな深く長いキスを不意にされてみろ!
絶対に普通の女性はついていけないに決まっている。
しかし、絵里のささやかな抵抗は虚しく高科はそのまま何事もなかったように歩き出した。
「え!?ちょっと!高科さん?!聞いてます?!」
「…名前。」
「え?」
「…俺の下の名前教えただろう。」
どうやら名前呼びをお望みらしい。…こんなとこが堪なく可愛い。ちょっと緊張して初めて呼んだ名前に彼がはにかんだような笑みを見せる。
このお話大好きなんです!!続編かなり希望です有川さん!!(と、こんなところで叫んでみる)
高科さんの名前が気になって仕方がない・・・。
プロポーズの言葉はどっかの誰かさんと同じにしてみた(笑)