2016年1月17日日曜日

妻の一声



※天花+理鳴(贅沢)

※未来捏造(花蓮正妃、皇后死去後)

※捏造設定(原作との矛盾点あり)

※読まなくても問題ありませんが、コレとリンクしている点があります




―――皇帝陛下が、遣鋒使として宴に呼ばれた美姫と一夜を過ごしたらしい、という噂を聞いたのは、陛下が正妃のもとに5日顔を出さなかった次の日である。


花蓮は皇帝の仕事が忙しいのはわかっている。
仕事に繁忙期という時期があるのは経験的に知っているし、先日尋ねた時も疲れたような顔でしばらくは忙しい、と呟いていたことも事実である。
しかし、異国の美人なお遣い様と戯れているとは何事だ。
全然暇ではないか…!自分にも紹介してくれればいいのに!
見当違いな不満を持っている正妃の怒りをどのように解釈したのかはわからないが、珍しく機嫌が悪そうな主人に侍女は恐る恐る声をかけた。


「御正妃様、宰相様の奥方がお見えですが…」

「えっ?鳴鳴が?」

「お嬢様!お久しぶりです!」

実は週に1,2回は顔を出しているのだが、毎日一緒に過ごしていた日々に比べれば、久々な心持ちな二人である。
もっとも、週に何度も奥方が後宮に遊びに行きすぎて宰相殿の機嫌が悪いと陛下から聞いた花蓮が、鳴鳴にそれとなく言い聞かせ、これでも回数は減っているのだが。

しばし、二人で再会を分かち合い(鳴鳴のテンションにつられて花蓮も大げさなリアクションをとっている)、日頃の愚痴や近況の報告(といってもここ2、3日の間の話だが)をして、落ち着いたころ、花蓮はさも軽い口調で鳴鳴に提案を持ちかけた。

「…え?衣装を、交換、ですか…?」

「そう!私、もう2,3か月は後宮にこもりっきりなんだけど、やっぱりこんな生活耐えられないのよねえ…。最初の頃は陛下がお忍びで時々は一緒に連れだしてくれてたんだけど、最近忙しいらしくて、それも無理みたいだし。でも、そんなこと私には関係ないし、私は外にいきたいの!…で、警備の目を盗むにはどうしたらいいかしらって考えたんだけど、入れ替わり作戦がやっぱり一番有効だと思うのよ!」

「は、はあ…」

鳴鳴に余計な心配はかけないように、とりあえず当たり障りのないことだけ告げて説得を試みる花蓮である。(花蓮が鳴鳴を気遣うのは昔からだ)
まあ、半分以上彼女の本音であるので、鳴鳴は花蓮が何か隠していることなど気付かなかったようだ。

「確かに私とお嬢様なら背丈は似ていますし、お嬢様がお持ちの衣装の中には鬘とかもありますし、バレないでしょうけど…」

「侍女も説得しといたから大丈夫よ!」

花蓮に甘い天綸が、侍女達に花蓮の言うことはできるだけ聞くように言い聞かせていることに花蓮は気づいていない。

「…でも、私、今日は早めに帰ってくるようにと、宰相様に…」

「あら、そうなの?うーん。じゃあ、なるべく早く帰ってくるから!…ていうか、鳴鳴、あなた、まだ宰相様のこと名前で呼んでいないのね?」

「…!そ、それは…」

「まあ、それは私もなんだけど。あの宰相様ってなんか形にこだわりそうだし、ちゃんと名前呼んであげたら喜ぶんじゃない?」

「…わ、わかりました…!お、お嬢様が、そうおっしゃるなら、頑張ってみます…!」

顔を赤くしながら意気込む鳴鳴に花蓮は満足したように頷いて、内心いいこと
したわ私。なんて思いつつ、口元をむふむふさせる。
早めに帰るように言いつけるあたり、実は過保護で独占欲が強いのではないかと心のメモ帳に宰相のキャラ設定を付け加えた。
そんな妄想にふけっている花蓮の脇で、鳴鳴は心配そうに上目遣いで元主人を見上げる。

「でも、陛下はご存じなんですか?」

「え?」

「…私は、宰相様にいうつもりはありませんが、陛下にはちゃんと承諾を取ったほうが…」

あの男のことだ。花蓮の願いなど断るまい、と思ってのことだったのだが、
(それに皇帝陛下に言っておけば、万が一何かあった時でも安心である)
花蓮は口をむふむふからむにゅむにゅにかえる。
そして、意地になったように大声で宣言した。

「…いいのよ。陛下なんて知らないわ!…陛下がその気なら、私だって、勝手にしてやるんだから…!」

「お、お嬢様…?!」

花蓮が勝手でなかったことはないだろう、と鳴鳴の夫ならば即座にツッコんだろうが、生憎と、お嬢様至上主義の鳴鳴は、そんなことは露ほども思わず、結局花蓮の願いの通りに動いてしまうのだった。


☆★☆


元々、花蓮は浮気(仮)をされたことになど怒ってはいない。
天綸は皇帝で、後宮に何人も妃という名の愛人を抱えている存在である。
本来ならば何人の女人と遊ぼうが寝ようが皇帝の自由である。
それだけのことを許される身分なのだ。
そんなことは出会った当初から分かっていたし、
もともと自分がその愛人候補の一人だったのだ。
今でこそたった一人の正妃という身の上ではあるが、初めは下っぱの梅花殿の妃だった。
なんやかんや(今でも謎であるが)皇帝陛下に気に入られ、
自分の想像もしていなかった運命に流されてしまった結果が今であり、
そのうち飽きるであろう、というのは想像していた通りだ。
ただ、正妃という位に納まる前に飽きて欲しかったなあとは思うが。

だから、陛下は陛下の自由にすればいいと、花蓮は真顔で言える。
(花蓮は通りを弁える物わかりのいい娘なのである)
胸の痛みがないわけではないが、こういった切なさは煌恋小説を読んでいる時にでも感じており、慣れているといえば慣れている。
むにゅむにゅと口を動かし、花蓮は胸の内に何かを呑みこみ、深く深呼吸をした。

しかし!!!
ここで何もしないのでは気が済まない!!!
正妃という立場上の面倒や不自由さの鬱憤の解消ぐらいしても罰は当たらないだろうと主張したい。

と、いうわけで、色々我慢した末の後宮からの逃走である。

久々の外の空気を吸って機嫌もだいぶ回復し(単純で切り替えが早いところが花蓮の愛すべき点である)、さあて、しばらく見ていなかったお気に入りのお店を回ろうと花蓮は意気揚々と歩き出した。



☆★☆


一方、愛する正妃が後宮から逃亡しているなど想像もしていない皇帝陛下は、山のような仕事を前に悪戦苦闘していた。
ここまで毎日忙しいと傀儡時代が懐かしくなってくる、とは同じようにここしばらく徹夜に付き合ってくれている異兄弟であり、一番の側近である理央には言えないが。

今日も花蓮のもとに顔を出せないのだろうなあ、と諦めて溜息をつくと、
何やら知らせを持ってきたらしい文官が慌てたように理央に耳打ちする。
すると、もともと寝不足で眉間にしわが寄っていた理央の顔がさらに険悪さを増した。


「…陛下」

「どうした?」

「…私の妻が、今日も御正妃様のもとに顔を出したはずなのですが、退出して何時間経っても、我が邸に帰宅していない、との報告がありました」

「何?」

「…なんでも、店を梯子して歩き回っているようなのですが、…ご存じの通り、妻はそれほど足が丈夫ではありません」

「…そうだな。…で?」

「不審に思って護衛の者が私の妻らしき人物に接触したところ、御正妃様と大層似た人物だった、と」

「…は?」

「は、ではありません…!!!いったい、どういうことなんですか?!」

私の妻を巻き込まないで頂きたい…!!!と顔に書いてある理央をしり目に、天綸は慌てて立ちあがった。


☆★☆


「花蓮!」


政務など放り出して花蓮のもとに駆け付けた天綸は、懐かしい典浪の格好だ。


久しぶりに自分の足でトキメキ小説を補充し、解放感と萌えを満喫していた花蓮は、能天気に振り返った。

「あ、陛下」

その顔にはあちゃーというバレてしまった気まずさと、なんとか誤魔化そうという気持ちが表れている。
そんな花蓮の顔すらも可愛く好ましく思えてしまう天綸だが、今回は鼻の下を伸ばしているわけにもいかない。
なにせ、天綸の隣には極寒の冷気をまとった機嫌最悪の男がいるのだから。


「状況を説明してもらいましょうか」

冷静になろうとしているからか、声が平坦で怒りの感情が見えずらいのがかえって怖い。
天綸が見てきた中でも一番の激怒だったと後の述べるほど、理央の怒りは凄まじかった。

状況説明中、花蓮は鳴鳴を庇うが、花蓮の行動は火に油を注ぐことにしかならない。
そもそも花蓮に対しての理央の感情はいつもマイナスを振り切っている。
花蓮が何かをするたびに理央の逆鱗に触れてしまうのである。

もうこれは自分や花蓮の手には負えまいと、天綸は時としてある意味皇帝陛下(あるじ)権限よりも効力も拘束力もある絶対最強の奥方の鶴の一声に任せようと鳴鳴を呼んだ。


☆★☆


「・・・も、申し訳ありませんでした・・・!」

なかなか帰ってこずともまさか花蓮が後宮外に逃亡したことがばれたとは思いもよらなかった(だってお嬢様だもの!!!)鳴鳴は、皇帝陛下に呼ばれ、大層動揺していた。
しかし、その呼び出された場には天綸や夫である理央の他、花蓮もいたため、状況を瞬時に理解した。

皇帝陛下を謀り、妃の後宮逃亡を手引きしたのだ。
もしかしたら何かの罰に処せられるのでは、と思いこんでいた鳴鳴だったが、
とりあえず、花蓮に罪はないことだけは主張しようと状況の弁解を試みた。

天綸は苦笑をさらに深め、鳴鳴の言い分を聞いてくれたが、理央の眉間のしわは深まっていく一方である。
そして元凶であり、話の中心でもある花蓮といえば、自身の弁解はせず花蓮を庇い、なんとか許しを請おうとしている鳴鳴の様子に感動していた。

「鳴鳴…!そんな風に私のこと考えて心配してくれてたのね…!」

「お嬢様…!」

相変わらずの二人の深い主従関係にやきもちを焼きそうになった天綸の脇で、理央は我慢の限界を超えたらしい。泣く子が見れば逃げ帰るであろう形相の宰相は、低く重い声で命じた。

「いい加減、その衣装を脱げ。おまえは自分の立場がわかっていないのか。おまえは私の妻だろう」

どうやら、正妃の後宮逃亡を手引きしたことではなく、正妃の格好をして、本来皇帝の妃が住まうべき後宮に残っていたことに理央が怒っているらしい、とその一言で気づいた鳴鳴である。

涙目になりかけていた瞳をぱちぱちと瞬かせ、ぽかんとした顔で理央を見つめる。
そんな奥方から向けられる視線に耐えられなくなったのか、理央はそっぽを向いた。

「…理央さま」

おずおず名前を呼び、ぎゅっと服の裾を握った鳴鳴と視線を合わせず、理央はただその手を握った。そして一刻も早くこの場を離れたいと言わんばかりに戸に足を進める。

「…帰るぞ」

「はい…!」

残された皇帝陛下とその正妃はしばらく茫然としていたが、宰相夫妻の背中が見えなくなった頃、ようやく正気を取り戻した。
甘甘のラブラブシーンに悶え転がり、危うく鼻血が出そうになる花蓮はすっかりここ数日の鬱憤など忘れ去っていた。
そんな最愛の正妃の隣には、ほっと安堵する皇帝陛下の姿があったそうな。

☆★☆


女官にもともと鳴鳴が着ていた服を持ってこさせ、着替えさせた理央は無言のまま鳴鳴を見下ろしていた。

「心配と迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

「…」

謝罪を何度述べても相変わらず眉間にしわを寄せたままの理央に、そんなに怒らなくてもいいじゃない、とだんだん腹が立ってきた鳴鳴である。

「理央さま」

鳴鳴の中での最終手段を使ってみるが、理央の眉間の皺に変化はない。

「貴方が困った時とかに呼べとおっしゃったのに・・・」

小声でごねてみると、理央はぴくと反応した。

「・・・それは・・・お前は、私が怒っていると困るのか」

虚をつかれたように怪訝な顔をした理央は内心驚いているようだった。
そんな理央に鳴鳴は、この人は人を何だと思っているのだろう、と怒りを通り越して呆れてしまう。

愛する夫が怒っていて楽しい妻がいるものか。
ーーー天綸あたりは花蓮が怒っていても何をしていても楽しいのかもしれないが。
少なくとも、鳴鳴にそんな趣味・嗜好はない。

その後の反応のない夫を見つめていると、鳴鳴の頭の中でふと、夫の言葉が思い浮かんだ。

『お前がどうしてもお礼をしたいというなら、口づけをすればよい』

ーーーお礼ではないが、お詫びでも、それは有効だろうか。

遊び心なのか、悪戯したい欲求なのか、むくむくと沸き上がった感情は抑えきれず、
背伸びして一瞬唇が触れ合った時、目を見開いた夫の顔を見て、鳴鳴は笑った。


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書きたかったのは主人公カップルではなく、過保護な理央×お嬢様至上主義な愛され鳴鳴ですwwww
それにちょっかいをかける花蓮も美味しいな、と。
まあ花蓮ちゃんに色々後押しされていることに理央が気づいたところで感謝はしないだろうがw

はよ新刊を…!!!私はこのカップルの行く末が気になってしゃーない!
まあだいたい流れは読めるんだけども、理央がどのくらいまで甘くなってくれるのか楽しみ…!まあ本編でも無自覚に鳴鳴には甘い宰相様ですがwwww
鳴鳴ちゃんもデレるのかしらーwww
最終巻、出てしまいましたね…。なにゆえナイスバディで美人に成長した鳴鳴を挿絵で描いて下さらなかったか、大変遺憾です。
そしてもっと甘甘な宰相夫婦が見たかったよー。
続編の小説で鳴鳴の挿絵、ありましたね・・・!
そして妻が落ち込んだら慰める夫とか素晴らしい…!
もっと理鳴見たかった…;;

終わっちゃって寂しい…。
多分これが最後の理鳴だと思います。
名前呼びとか公式と流れが違いますが、添削しててUPするのが遅かっただけで、最新刊が出る前に描いてたものなのです・・・。
なので、そこらへんはお許しいただければと思います。
にじそうさくって素晴らしい←

そして多分最終巻と続編を見る限り、花蓮ちゃんの反応がこの話と矛盾するだろうとは思いますが、それも含め、お許しくださいませ。


ぴくしぶにもUPする予定だったのですが、うーん・・・。
ここまで原作との矛盾点があると、考えますね・・・。
ここまで来てくださって、読んでくださる人がいるならばもうそれでいいかな、と。

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