忍恋(真かえ)
※ED後
※PSP版ステラ特典小冊子の穴山先輩SSの真田先生バージョン。真田先生SSも混ぜてあったり。
※ネタばれ考慮してません
※真かえならなんでもいい人向け
※かっこいい真田先生・・・?そんな先生いない
※ぴくしぶUPずみ
「はい、これで大丈夫ですよ」
かえでは繕い終わった着物を幼子に渡すと、その幼子は嬉しそうにぎゅっと着物を握り締め、かえでに微笑みながらお礼をつげる。
「ありがとうございます、かえで様」
「いえいえ。こちらこそ、いつもありがとうございます」
かえでは奉公に来ているその幼子ににこにこと笑顔で別れを告げ、さあ自分の部屋に戻ろうと足を踏み出そうとしたその時。
「―――妬けるね・・・」
「きゃっ」
背後から突然抱きかかえられた。
かと思えば、耳元で甘い声が囁く。
「使用人にも優しい君も好きだけど、君は俺のものだって、自覚はある?」
「ゆ、幸影さん…!」
「ずるいな。俺だって君に繕い物なんてしてもらったことないのに」
「それは…」
だって真田家には使用人がいっぱいいる。
かえでが素人な腕前を発揮しなくても、かえでより腕の確かな専門の女中がやったほうが立派に仕上がるだろう。
さっきの子は、仕事中に着物を引っ掛けて破けてしまい、仕事に支障が出ると嘆いていたのを見ていられなかっただけだ。
まだ幼いあの子は、自分で縫い物などできないのだろう。しかし誰に頼ることもできなかった。
泣きそうになりながらも仕事をなんとかこなそうと必死だった姿が、幼いころの自分と重なった。
過去を思い出して目を細めたかえでを見つめ、幸影は自分に意識を向けてもらうべく、かえでをより一層強く抱きしめた。
「ゆ、幸影さん、朝から何を…!」
真っ赤になって抗議するかえでに大人気なく拗ねた表情を隠さない幸影は、片手でかえでの腰をつかんだまま、もう片方の手でかえで手をとった。
「せっかく超特急で任務も雑務も終わらせて、君の元に2日ぶりに帰ってきたのに、君は部屋にいないし。そうかと思えば使用人の子の着物なんて繕ってるし。俺が拗ねても仕方がないと思わない?」
ちゅっと手のひらに口付けられて、かえでの顔はさらに真っ赤に染まった。
そして羞恥に耐え切れなくなったかえでは、そのまま目を閉じて俯く。
「あ、あの、お出迎えできなくてごめんなさい。おかえりなさい。お疲れ様でした…!」
「うん。ありがとう。ただいま」
幸影は俯いているかえでの髪にもちゅっと口づける。
「ねえ、かえでちゃん。おかえりの口付けを強請ってもいい?」
「えええええ?!」
思わず驚いて顔を上げたかえでの目に映ったのは、幸影の笑みだった。
「そんなに驚かなくても。君にいってらっしゃいの口付けをしてもらったから、すごく調子が良かったんだ。だから、君が口付けしてくれたら、任務の疲れもすぐにとれてしまうと思うんだけど…いいよね?」
にっこりと見惚れるような笑顔を浮かべ、幸影は悪びれなく決定事項を告げる。
一応疑問系の問いかけではあるが、かえでに否の返答は許さないと悟らせるには十分な笑顔と口調だった。
真意の読めない幸影の笑顔も少し怖いが、真意のわかっている幸影の笑顔も十分怖い。
腰に添えられているだけのはずのに、身じろぎもできない。
そして何より。
(目が…本気だ…)
これは逃がしてくれそうにない、とかえでは腹をくくる。
「お、おかえりなさい…」
恥ずかしさを我慢して、頬の傷にちゅっと軽く口付けたかえでに、幸影は嬉しそうに笑みを深める。
「うん、ありがとう。…ただいま」
頬にだけでは物足りなかったのか、幸影はただいまの口付けにしては深く激しい口付けを仕掛けてきた。
どのくらい経ったのか、名残惜しげに唇を離した幸影はそのままかえでを抱き上げる。
「…わ!…もう…朝から何するんですか…」
「ごめんね。恥ずかしがって照れる君の顔が可愛くて…」
「ゆ、幸影さん…!」
「もちろん、君の蕩けそうな表情も、赤く染まった美味しそうな頬も、艶やかな唇も、甘い声も、大好きだよ」
「………!!」
朝から口説き文句のとまらない幸影をとがめるように名前を呼んでも、繰り返される甘い殺し文句に、かえでは言葉を失ってしまう。
「さて…話を戻すけど、君は誰のものかな?」
「え?」
「この親指も、人差し指も、中指も…あの子のために針を使った指先全て、俺のものだよ?その自覚はある?」
ちゅ、ちゅ、ちゅ…。と全ての指に口付けられて、彼の独占欲を思い知らされる。
あいつは心が狭いから気をつけろよ、とは誰の言葉だっただろうか。
気をつけるってどうすればいいのか、聞いておくべきだった。
「ゆ、幸影さん…!」
抱き上げられて逃げ場がないかえでは暴れるが、安定感のある幸影の腕の中から、逃げ出せる気がしない。
びくともしないその力強くたくましい腕は、かえでの抵抗を物ともしない。
無駄な抵抗だと笑われているような気さえしてしまう。
「お、おろしてください!」
「うん、いいよ。君が俺に愛してるって言ってくれたら、ね」
「…!!!」
「君が俺を想ってくれてるってことは信じてるけど、たまには言葉が欲しいって言うのは、俺の我が儘かな?」
かえでを片手で軽々と抱き上げる幸影は、一方の手でかえでの髪を撫でる。
幸影は、かえでが愛を告げても、そうでなくても、本当にずっとそうしてるつもりだった。
かえでは、幸影のそんな上機嫌な様子も気づかずに、唇をかみ締めて、震えそうになる小さな声で問いかけた。
「飽きて、しまうんですか…?」
「え…?」
「…っ、な、なんでもあり…っん…?!」
呆然とした幸影の顔に、しまった、と思ったかえでは失言を悟る。
だが、次の瞬間にはもう口付けられていた。
幸影の舌が、かえでの口内を暴れ回る。口の天井を撫でるように舌でなぞられて。歯の一本一本の形を確かめるかのように舌を動かされて。逃げ回っていた舌が捕まるのに時間はかからなかった。いやらしい水音がして舌が絡まって。唇を吸われて。
最後に仕上げとばかりに舌を吸われてようやく唇が離れる頃には、かえでの意識は朦朧としていた。
「はぁっ…まったく…君って子は…」
俺が君に飽きるわけがないでしょ、と唇を親指で拭う幸影は、壮絶な色気を漂わせていた。
直視できずに顔を伏せるかえでを咎めるように、幸影は目を細めて、耳元で囁いた。
「君に無理をさせるつもりはないんだけど…。…君を不安にさせてしまったお詫びを兼ねて、せめて君を精一杯甘やかしてあげる」
いつも甘やかされている自覚のあるかえでは、間に合っています、と首を振ろうとするが、反論を許さない幸影の瞳に縛り付けられる。
そんなかえでに追い討ちをかけるように、幸影の手がかえでの顎を固定する。
「愛してるよ。過去も、未来も、ずっと」
幸影の端正な顔が近づいてくる。唇と唇が触れそうになる寸前でかえでは諦めと安堵が入り混じった複雑な心情で、瞳を閉じた。
「―ーー君が不安を感じる暇なんてなくなるくらい、俺に夢中にさせてあげるよ」
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