2014年11月28日金曜日

まどろみの後で


※ヴァンパイア騎士ED後
※捏造妄想
※ネタばれ
※枢×優×零+子ども





再び目を開いた時、二人の子どもができていた――――…。


彼には心の底から溺愛する少女がいた。
もともと同じ家で育ち、その成長を見守り、時にはお互いの意思疎通ができずにすれ違ったこともあったが、彼女がいてこその自分の人生だったし、彼女がいたからこそ彼女を守るため生きていこうと思えた。

そんな彼女は自分を慕ってくれ愛してくれた。
自分を見つめる瞳の奥に、隠しきれない欲望や願望を見つければ、愛しさは増すと言うもの。
そして自分と同じ気持ちだと思うと嬉しく優越感すら感じていた。
彼女に望まれていると思えばこそ、手を伸ばしたくなった。
しかし、そんなことは彼の立場上許されることではなかった。
今まで積み上げてきたものが無駄になる。
この平和な箱庭をまだ壊すわけにはいかなかった。

愛する少女のもとには一人の男が常に傍にいた。
自分が仕向けたこととはいえ、それは彼にとって胸糞悪いことではあったが、
彼女を守るために必要な一手だと自分を無理矢理納得させていた。

あの優しく温かな少女に、あの男が惹かれないわけがなかったのに。

油断したつもりはなかった。
常に彼女を見守り、助言を与え、救いの手を差し伸べていたはずだった。
彼女の心は常に自分でいっぱいであるはずだった。
それなのに。
いったいどこで間違ったのか。

彼女に全ての事情を話せなかったこと?
彼女の代わりを別の女性にさせたから?
彼を彼女の傍に置いたこと?
自分の彼女への接し方や愛し方?

色々な要因と選択の分岐点を思い浮かべたが、どれもあたっているようで、
どれも外れているように感じた。

しかし、どれだけ彼がここで思考を働かせようが、彼女はもうここにはいないのだから意味はない。

結局のところ、過去を振り返ってみても、この現状は変わらないのだから。

二人いた子どもが、いつの間にか一人だけになっていた。
銀髪の子に姉と呼ばれていた黒髪の少女の、丸い瞳が、彼女を想わせた。

ぼーと見つめたままでいると、彼女は決定事項を確認してきた。

「…一応、聞いておくわ。父さんと呼ぶけれど、良いかしら?」

「…構わないよ。…まさかあの時に子を授かるなんて…」

しかも、子どもができにくい純血種同士で。
もっとも、純血種で子どもが少ないのは、そういう行為があまりされなかったことが大きな要因かもしれないが。

「…奇跡のようだね」

「…何が?」

「…」

君の存在が。
僕が、彼女なしで生きていることが。
僕の、この今までにない感情が。

問いかけに答えない枢に、少女は端から期待していなかったのか、
あるいは答えを求めていなかったのか、そのまま沈黙を保った。


「…ねえ、君の名前を教えてくれないか」

「…今更ね」

「…ごめん、こんな父親で」

目が覚めた時、本当は君のいない日々なんて御免だと思っていた。

いかに君が残してくれたものだろうが、君がいなければ意味がないと思っていた。

…でも、ねえ。優姫。
もう一度、歩いてみるのも悪くはないと思えるんだ。
君が僕に与えてくれた時間を、精一杯、生きてみようと思うんだ。

君のおかげだよ。

君が残してくれたものは、時間だけじゃない。
この子たちと、生きてみたいと、思うよ。

もう一度学校に行ってみるのも悪くないかもしれない。
父親になったのに変だろうか。
でも、仲間と生きる愛しい日々を、君が教えてくれたから。
僕のような自分勝手なやつにまた仲間ができる保証はないけど。
僕は、そんな日々を生きてみたいと思う。


「…君の名前を、呼んでもいいかな」

「…当たり前でしょう。父さんだもの」

彼女は呆れたように、でも少し照れた嬉しそうな顔で名前を教えてくれた。

「…良い名前だね」

「それも当然よ。母さんがつけたんだもの」

「そうか…優姫が。…羨ましいな」

「…私にまで嫉妬するのは止めてよね」

親子なんだから。
拗ねたような顔が、いつかの君と重なった。

『   』

口にだしてみると、それは幸せを倍増させる呪文のようで。

名前を呼ばれた彼女が、何、とはにかんだように笑う姿も、愛おしくて。

ああ、幸せだ。
生きている。
また、君と紡いだ日々を思い返して。
そして君の残してくれたこの子達と生きる。
幸せだ。
なんてことない日々を、君を感じながら生きられるなんて。

なのに、何故かな。

「…!ちょっ…!」

「…」

涙が出る。

「ああ…ごめんね。…違うんだよ。…ただ…」

幸せで。幸せで。

「…泣き虫な父さんだなんて調子狂うわ」

ああ、優姫。そこにいるのかい?
ねえ、聞いて欲しいんだ。
いつか君のもとに還る時に、君に伝えるよ。

ありがとう。
愛してる。
僕は、幸せだよ。

朝を告げる鳥の声が、愛を告げるかのように甘く優しく響いた。


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ぶっちゃけ、最終話読んだどき、え?!これで終わり?!って思いました。
納得いかない気持ちも、補足して欲しいし、この後が知りたい気持にもなったのですが、ある意味二人と結ばれてるし、ハピエンっちゃハピエンなのだろうなって無理矢理自分の中で昇華させるために書いたようなものです。

本来の術ならきっと枢の記憶はないだろうし、
優姫が枢の記憶を残しておくはずがないと思うんです。
でも、もし目覚めた後、例え優姫がいなくても枢様が自分の命を絶つことなく幸せに過ごせたなら、それはハッピーエンドだろうと思ったので。

正直言うと、枢様と幸せになって欲しかった気持ちのが7割くらいなんですが、まあ、それは自分の妄想で埋めるとします(笑)

一人、おそらく銀髪…あるいは白髪の子は男か女か不明だったので、強制ログアウト(笑)あと、零っぽい目と髪が、枢様を苛立たせるんじゃないかと言う不安もあったw
多分息子かなあって思うんですが、どうだろ…。

作者様が漫画家続けるかわからない的な発言してたので、心配してたんですが、めでたく新連載始まって、これからも先生の漫画が読めることを素直に喜んでいます。

実は蓮キョがなりきりヴァン騎士やったら意外とハマり役なんじゃないかと妄想してるので、次はきっと蓮キョかなw

ということで、お久しぶりに失礼しました。
相変わらずの雰囲気SSですみません。
ここまで長々と後書きも読んで下さった方、(いないでしょうがいれば、)ありがとうごうざいました!

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