2014年11月30日日曜日

双界にようこそ! 



※クロスオーバー
(双界幻幽伝&贅沢な身の上)

※蒼朧+天花(?)

※なんでもありの無茶苦茶設定

※贅沢、双界共に時期は初期ごろ。




突然暗転した世界で、恐る恐る瞼を上げると、そこは見たこともない、何もない空間が広がっていた。


「なんだここは?」

「突然世界が…。」

「ようこそ!会いたかったわ!」

「うお!なんだお前は?!」

「私は淑花蓮よ」

突然現れた女に数歩足を引き、震えて目をつぶっている朧月の腰に手を回してかばいつつ、蒼刻は警戒を強める。
人見知りな朧月は、普段の鈍さはどこにいったのか、一目散に蒼刻の後ろに隠れた。

「で、あの人は天綸」

奇想天外な女の動向に気を取られていたが、
女の言葉通り、もうひとり別の気配を感じた。
女一人相手なら何とでもなるが、もう一つの気配は男だ。
しかもそこそこ腕が立つように見える。
このわけのわからない空間の中で、朧月を庇いながらどこまでやれるか。
そんな物騒なことを考えている蒼刻を置いて、花蓮と名乗った少女と男はマイペースに振舞っている。

「おい、突然なんなのだ。…この二人もドン引きしているぞ。
というかここはどこだ?」

「なによ陛下、ノリが悪いですね。もっとテンションを上げてくださいよ。
ここはなんでもありのパラレルワールドなんですよ!」

「ぱられるわあるど…?なんだそれは?」

蒼刻がきょとんをした顔をして尋ねる。
見知らぬ男と女二人に、こちらを害するような雰囲気は感じなかったので、
ある程度は距離を保ちつつも蒼刻は力を抜いた。
朧月は絶賛人見知り中だが。

「クロスオーバーとも言うわね。…ふふふ。まあ、これは私の夢の中なの!
ぶっちゃけちゃうと、書き手が今ハマってる作品のコラボというか
夢の共演なのよ!ご都合主義万歳だわ!それでこそ2次そうさくよね!」

「…相変わらずお前の言うことはよくわからないが、まあ夢ならそのうち覚めるか…」

「…おい、そんな意味がわからないものに、なに勝手に俺たちを巻き込んでるんだ…」

「…」

花蓮の暴走に慣れている天綸はもはや諦めてツッコミを放棄したが、
蒼刻は黙っていられず口をだす。
蒼刻の後ろで青い顔でいる朧月も色々ツッコミたいようだが、
人見知りの彼女――まあ今回は普通の人間でも関わりは避けたいと思うだろうが――は生身の人間相手に自分から口を開くなどということはしない。
もっと言ってやれ、というように蒼刻の着物をぎゅっとさらに強く握り締めただけである。

「いいじゃないですか!だってせっかく同じ中華系ラブコメだし!
出版社とか時代とか色々厚い壁はあるけど、そんなの私の妄想を前にしたら
ただの紙くずみたいなもんだし」

「…いや、なんかよくわからねえが、その発言は大丈夫なのか・・・?あらゆるとこに喧嘩売ってる気になるんだが…」

「そうだぞ、そんな問題がありそうなことを妄想していないで、お前は私と未来の妄想をすべきだ!」

…なんかもうひとりもめんどくさいこと言い出したぞ、と心の中でうんざりしつつ、蒼刻はとりあえずスルーした。
人の恋路を邪魔するものはなんとやらだ。

そんな男二人を無視し、(彼女はもともと生身の男には興味がないのだ。)
花蓮は蒼刻の後ろで震える朧月の顔を覗き込んだ。

「わああ。噂に違わぬ美少女ね…!皇后様をさらにか弱くさせて儚げにさせた美姫ってかんじかしら!」

その見事な黒髪をなでなでしたい、細く華奢な身体をギュってしたい、
怯えたような瞳を眺めて愛でたい、お嫁にしたい、などと
なんなんだお前は、と蒼刻に突っ込まれそうな欲望を心の中で巡らせていると、あやうく鼻血が出そうになったので、慌てて自制する。

ここにちり紙は持ってきていないし、なにより鼻血など吹いたら
この目の前の美少女をさらに怯えさせてしまうことになるだろうことを花蓮は承知していた。

かえりたい、ひきこもりたい、と顔に書いてある朧月を気にもせずに、
むふむふと口元をにやけさせる花蓮に、蒼刻は眉を寄せる。

「…本当なんなんだ、お前らは。」

こちらに害を加えるつもりはなさそうだが、
こんな意味のわからない世界にいきなり連れてこられ、
なんの説明もなしとはどういうことだ、とだんだん腹が立ってくる。
蒼刻は年齢より大人びいているが、短気なところもあるのである。

とりあえず、極度の人見知りで今にも気を失いそうな彼女に
これ以上変な女を近寄らせまいと、朧月を抱き上げ距離を作る。
朧月はそんな蒼刻の気遣いにほっとしたように身を寄せる。

体が硬いのは緊張しているからだと分かるが、
自分の腕の中でこれほどまでに怯えている彼女をみるのは久しぶりだな、
と蒼刻は他人が聞けばノロケにしか聞こえないこと――花蓮にとってはご馳走だろうことを思った。
少しでも安心させるために髪と頬を撫でてやると、
幾分力は抜けたようだったが、やはりまだ緊張は残っているようだった。

しかし、朧月と蒼刻にとっては不幸なことに、
そんな二人の行動はますます花蓮の興奮に火をつけたようだった。

「いい!いいわ!身長差・体格差カップルの王道の萌えシュチュだわ!」

「片腕に抱き上げて欲しいなら俺もいつでもやってやるぞ、花蓮!」

いちいち発言が残念な、恋する男の純情にも。


◇◇◇


「…取材、ですか…」

蒼刻の腕の中で(離れるのが不安だった、そして蒼刻も離しがらなかったのでこのままだ)ようやく言葉を交わせるまでになった朧月は
出された桃まんを手にとって答える。

あ、美味しい、とここに来て始めて頬を綻ばせた彼女に
餌付けされてるんじゃねえよ、と過去の自分を棚に上げつつ心の中で突っ込む蒼刻だ。

この花蓮というらしい変わった少女は(これで皇帝の寵姫だというのだから驚きだ)こちらのことをよく調べているようだ。
対してこちらに情報が足りないというのは不利だな、
とついつい思ってしまうのは職業病だ。
情報というのは、命運を握っているのものなのだ。

知らず顔が物騒になっていく蒼刻とは違って
のほほんと2個目をとって桃まんを食べ始めた朧月にじっと目線を向けると、
蒼刻の視線に気づき、キョトンとする。
桃まんが欲しいのだと勘違いしたらしく、食べますか?
というように首をかしげて桃まんを差し出してくる。

口数が少ないのはまだ慣れない人前だからだろう。
しかし、人前で食事できるのはきっと自分がいるからだと
うぬぼれではない確信を抱きつつ、蒼刻は遠慮なく桃まんをかじる。
もちろん、朧月の手を引き寄せて。
一口食べて甘え、と呟くと、口を尖らせたので
その口に桃まんを向けてやると口をもごもご動かして静かになった。
よほどお気に召したのか。

花蓮達を気にもせずにあーんと食べさせあっている二人の様子を
鼻血を垂らしそうになりながら見ていた花蓮は表面上は珍しく大人しい。
脳内ではもちろん二人の妄想が大フィーバーしていることは天綸だけは十分わかっていたが。

ごほん、と天綸が咳払いすると、朧月はびくり、と肩を震わせ、
蒼刻の服を握り締めながら何かを思い出すようにゆっくりと口を開く。


「…そうですね…幽鬼の話だったらいくらでもお話できますが…」

「そうじゃないのよ!私がしりたいのは二人の馴れ初めなの!
どうやって知り合って、どういう展開があって、どういうオチがついたかなの!
二人の生い立ちから、第三者の設定まで、本人の口から聞くことに意味があるのよ!」

「…なんだか湘雲様の時を思い出しますね…」

熱く拳を握って語る花蓮を見て、
朧月がポツリと言った一言は幸いかどうか蒼刻の耳にしか届かなかった。


◇◇◇


蒼刻さんは優しくて、強くて、頼りになって、かっこよくて、素敵な方です。

他人にはうっとしいノロケにしか聞こえない話は、しかし花蓮にしてみれば美味しいご馳走だ。
妄想欲をそそられながら、おかわり!と言うようにそれでそれで?と続きを促すようににこにこと笑う。

居づらい蒼刻だが、朧月がひとりで見知らぬ他人と会話ができるとも思えないし、なにより一人にするのは不安だったので、しょうがなく茶を飲みながら意識を無にする。

隣で俺はそんなこと言ってもらったことなどないぞ・・・。
と本気で悔しがっている残念な男をスルーするのにも、相当な精神力を使いながら。

「なんていうか、あいつも結構な珍獣で変な女だが、お前んとこのも、相当逸脱してんな…」

「なんだと貴様!花蓮の魅力がわからんのか!」

「わかりたくないし、わからんが、お前はわかられても困るんじゃないのか」

「えーい、うるさい!花蓮は私のだからな!やらんぞ!」

「いや、別にいらねえけどな…」

俺にはあいつがいるし…。珍獣は一人いりゃ十分だ。

心の中で呟いたはずの言葉は、何故か花蓮に筒抜けだった。

「うんうん。ヒーローにとってヒロインは一人で十分よね!唯一無二!かけがえのない特別な存在!それでこそ二人の愛が至高で尊いものになるのよ…!」

「…また暴走し始まってるが、おれはそろそろ帰っていいか」

「…蒼刻さんが帰るなら、私も…!」

このような場所においていかれては堪らない!とばかりに朧月が桃まんをほおり出して蒼刻に抱きつく。
そんな朧月の反応に嬉しくないわけがなく、頬が熱くなるが、蒼刻にとって幸いなことに花蓮は別にことに気をとられ、見逃してた。

「あら…そろそろ私の妄想時間(ときめきタイム)も終わりのようね…」

「よし、帰るか」

「そうね」

「話がまとまったところで、どーやって帰るんだ?」

「ふっふっふっふ…」

花蓮の笑い声に、蒼刻は身構える。
うるさいが害はないとわかってはいても、存在自体が意味分からないし、思考回路も蒼刻の想像に遠く及ばないので、何をするかわからない。
そういう意味で、あらゆる危険性を持っているとっても過言ではない。
朧月がいなければまだ楽観的に接するだろうが、彼女を守ると決めている以上、油断は欠片もできない。

「決まってるじゃない♪最後、何もかもハッピーエンドにする魔法…!それは…!」

「「それは…?」」

「『口づけ』よ!」

「「「…」」」

「…ごほん。あー…お前らがすればいいんじゃね??」

「言われずとももちろ「却下!」」

「呼び出したのは私だもの!私が法律!私が決めます!」

「む、むりですうううううう」

「じゃあ、一生ここにこのままよ?いいの?それで?」

「そっ…それは…」

「…まあ、へるもんじゃないし、な」

「蒼刻さん?!」

「なんだ?お前は相手が俺で不服かよ?」

「…いえ、あの、私もするなら、蒼刻さんが…でも…」

少女は自分が爆弾発言をしたのにも気づかず、もじもじと照れている。
いつもだったらここで止めに入る過保護な幽鬼も、保護者な虎もいない。

蒼刻はどうせなら夢の中でくらいという気持ちのようだが、朧月にとっては一代決心なのだ。
心の準備が間に合わない。

そんな二人をニヤニヤ見守る妄想暴走娘と、そんな娘を可愛いなあとのんきに眺めるとある国の皇帝。

はてはて、そんな4人がこの夢の世界から脱出し、日常に戻るのはいつなのか・・・。
そしてキスの行方はどうなのか…。

無事に目が覚めた時、蒼刻も朧月もこの夢の記憶を持っていなかった。とだけここに記し、終わることとする。

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なんの生産性もオチもない、自己満足俺得SSでした。
失礼。
同時期頃にハマったのでワルノリしました…さーせん…。

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