2011年4月16日土曜日

君の名前


※八雲→←晴香
※アニメ設定
※キャラ捏造でオリジナルキャラ(女)との八雲の絡みがあります
※いつものごとく視点がめちゃくちゃ・・・








今日ものんきに寝ているだろう化け猫に差し入れを届ける為に
―――と言いつつ自分の為に―――
晴香は八雲の住む部室に向かっていた。
そして入ろうとした時、珍しく女の人の声が聞こえた。


「八雲君。」

綺麗なソプラノの声。
思わず足が止まった。

「…家族でも恋人でも、友人でもないあなたにそんな呼び方される意味がわかりませんが。」

忌々しそうなめんどくさそうな八雲の声が救いといえば救いか。
でも。

「…そっか。…そうだよね。私と八雲君は別に恋人でも、家族でも、友達ですらないもんね…。」
そう。自分はただのトラブルメーカーだ。

その女性に対しての言葉なのだろうが、晴香には自分に向けて言われているように感じられた。

八雲は、晴香がここにいると気づいているのだろうか。

八雲の口は止まらない。
そんな皮肉や毒舌などはいつものことだと言われれば
その通りかもしれないが、晴香は今八雲の嫌味が
自分はあてはならないという自信はなかった。

どうして、こんなに自惚れていたのだろう。
八雲はいつだって晴香をただのトラブルメーカーだと言っていたのに。

「・・・何よ」

確かに迷惑だと散々言われていたが、
本気で言ってくれたのならば、晴香だって引き際は心構えていたのに。
それとも私が気づかなかっただけなのだろうか。
鈍い、と言われていたが本気の八雲の言葉ならわかったはずなのに。
自分のふがいなさに涙が出てきた。

八雲のあまりの言葉にとうとう怒りを抑えきれなかったのか、
部室から女性が飛び出した。
綺麗なスタイルの良い女性だった。
晴香がその姿を呆然と見送っていると、
開けっ放しなドアを閉めようとしたのだろうか、
八雲が出てきた。
そして怪訝そうな顔をして前髪をかきあげる。




「…なんで、そんな顔をしているんだ。…またトラブルか?」
「…八雲、君…。」
「なんで言ってこない?…後々大事になる前に僕に言えと前も言ったはずだが?」
「…大丈夫だよ。別になんでもないから。」
「そうは見えないが。」
「…心配してくれてありがとう。でも、本当になんでもないから。」
「…。」

弱々しく笑う晴香は、自分がちゃんと笑えていないことを知らないのだろうか。

八雲は不審を募らせる。

「…君は、馬鹿だ。」
「はいはい。私はどーせ馬鹿ですよ。」
「…。」

空元気の最たるものだろうと思うほどの様子に八雲の眉間のシワは深まる。
それをどう思ったのだろうか、晴香は逃げるように立ち去ろうとする。

「じゃあ、私行くね。バイバイ。」

「…。」

八雲には、去っていく晴香を引きとめる術も、権利も、
明確な理由もない。
それがなんだかイライラして、そんな自分に気づくと、
そのイライラは倍増した。

◆◆◆

確かに、その通りだった。反論も思い浮かばない。
晴香はそのまま踵を返し、急ぎ足で自分のマンションに向かった。
それから数日、八雲の部室には行かなかった。
否、行けなかった、の方が正しいか。
何と呼びかけよう?
貴方?君?
初心に戻って斎藤さん?いやいや、今更すぎるし・・・。
じゃあ、斎藤君?
それとも思い切って八雲さん?
もういっそのことねぇ、とかあの、とかで済まそうか。

そんなことをぐるぐると考えていると
見覚えのある寝ぐせ頭を発見した。

ああ。悔しい。
こんなに離れていても、見つけてしまった。
目が、追ってしまう。
久々だから余計にだろうか。
晴香のそんな視線に気づいたのか、
八雲が突然振り返り、思いっきり目があった。

「あ、や、やあ!」
「・・・久しぶりだな。」
「そ、そうだね!元気?」
「・・・おかげさまでな。・・・君は前よりも随分やつれたようだが?」
「そ、そんなことないよ?」
「・・・だから言ったんだ。トラブルなら・・・。」
「トラブルじゃないもん!」
「じゃあ、いったい・・・」
「だ、だって・・・わからなくなったんだもん・・・。」
「何が。」

目が潤んでいる晴香に気が付いているだろうに、
八雲は容赦なく晴香に質問攻めだ。

「わ、私、八雲君にとってただのトラブルメーカーだし・・・。」
「・・・。」
「・・・や、八雲君って呼んじゃいけなかったのかなとか、だったらなんて呼べばいいんだろう?とか・・・。」
「・・・はぁ・・・。・・・そんなことで悩んでたのか?」

どうやら先日の女性の依頼者の話を聞いていたらしい、
と八雲は晴香の挙動不審な態度を理解した。

「・・・そ、そんなことってなによ・・・。私にとっては大事なことなんだからね!」
「・・・泣きながら怒るな。・・・まったく、本当にきみは・・・。」
「・・・何よ・・・。」
「・・・いいか、一回しか言わないからよく聞けよ。…僕が名前で呼んで欲しいのは一人だけだ。」
「………そう…。」
「・・・全然わかってないな・・・。…本当に鈍いな君は。…だから、僕が名前を呼んで欲しい女性は君だけだと言ってるんだ。」
「…え?……え、え、え?!…八雲君…?あの、それはっ!?」
「…まさか、ここまで言ってわからないのか…?……君は本当に理解力がなくて困る。」
「あの、いや、わかったけど、…ほ、本当に?本当に私が呼んでもいいの?!」
「……だから、さっきからそう言っているだろ。」
「……そっか…。…私、呼んでもいいんだ…。…ありがとう!八雲君!」
「…何故礼を言われなくてはならないかわからないが。」
「だって、私には特別呼ばせてくれるんでしょう。だから!」
「………まあ、君に僕の言いたいことは半分も伝わってないってことがよくわかったよ。」
「え!?…わ、私…や、やっぱり勘違いしてる!?捉え方間違ってるの!?」

自惚れ過ぎた?!と青くなっている晴香に八雲はため息を吐いた。

「……まあ、今はそれでいいか。…まだ、僕もきちんと覚悟出来たわけじゃないからな。」

君の手離さず、幸せにする、覚悟が。

「…?あの、八雲君…?」
「…君の受け取った通りにすればいいってことだ。」
「…っ!」

驚いた後、本当に嬉しそうに笑う晴香に八雲は目を逸らす。

本当は告白の意味も含んでいたのだが、
この鈍いトラブルメーカーには一ミリも伝わらなかったらしい。
まったく、とさらに溜息を吐きたくなったが、

この鈍い彼女の前で吐いてしまうと
さらに泣かせてしまうことは想像するのに容易だったから
とりあえず我慢した。
ただ名前を呼ぶ許可を与えただけ。
それだけでこんなに喜ぶ晴香。

僕だって自惚れてしまいそうだ。

八雲はそんな自分に自嘲を浮かべた。

++++++++++++++++++++++++++++


どっちも自惚れて言いと思いますよ、お二人さん。

本当はくっつけるつもりだったんだけど、
アニメ晴香が愛せなかったのでちょっと意地悪をwww
アニメ晴香にちょっとお灸を沿えてみた(笑)

ちなみに、私は晴香の八雲君呼びが大好きです。(原作に限る)
出来れば晴香の心情の場面でも八雲君呼びにして欲しい・・・。
結婚しても八雲君呼びだと萌えるよね!(原作に限る)

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