2017年8月18日金曜日

妻の想い、夫は知らず。

※忍恋(真かえ)
※真田先生ルートED後

ピクシブUP予定なし。

よそ様のものとネタも展開もダダかぶりだったので、
こちらで供養。

FD出る前に出しとけ!っと思って…。

問題あれば消します。





真田幸影は多忙である。


普段は真田高等修練院の理事長兼教師として、教鞭をとって生徒に忍術を教え導き、教師に指示を出したり、修練院全体のことを考えて運営・管理を行っている。

加えて真田家当主として、真田家を取り仕切り、当主としての雑事もこなし、真田家を守り、真田家の分家もまとめている。

また豊臣家・家老として将軍を守り、老獪な幕臣を監視・抑制しつつ、時に進言し政治の補佐を行い、逢坂幕府を支えている。

そして影では真田勇士隊・組頭として世のため人のために平和を守り日夜戦っている。

要領がいいし慣れているためか、余裕にこなしているが、普通の人であれば過労で倒れてしまうだろう。
体質なのか睡眠時間は短くても大丈夫と本人は語るが、もっと体を休めてほしいとかえでは常々思っていた。

担っている仕事以外でも、面倒見が良い幸影はかえでの修行や鍛錬にだって付き合ってくれる。
強くなりたいというかえでの想いを大事にしてくれるのは嬉しい。
忙しい時間をかえでのために使ってくれるのだ。とてもありがたく思っている。

しかし、幸影を愛するが故に、かえではどうしても心配になってしまう。

どうにかして幸影に休んで欲しいと、かえで眠るように勧めても、何故か却って幸影の休みをなくしてしまう結果となる。

幸影曰く、かえでに触れ、かえでと過ごす時間こそが癒しであり、身も心も休まるそうだ。

かえでだって幸影と触れ合える時間は大切だ。
逞しい腕の中で幸影のぬくもりや匂いを感じ、睦言を囁く甘い声を堪能する。
強引なのに優しい手つきでかえでの熱を煽る幸影に翻弄されつつも、愛される時間はとても幸せで、胸がいっぱいになる。

だが、これとそれとは別だろう。 

努力と根性で様々な問題を解決してきたかえでだが、精神論ではどうにもならないことがあることもわかっている。むしろ、問題解決に効果抜群の方法があるのにそれを実行しない手はない。

かえでは愛し合った後は、何もできないほどに疲れて気を失ってしまう。
いくら経験値の差や、男女の差、体格差があるとはいえ、幸影だってあれだけ汗をかけば疲れるだろう。
それに夫婦の営み後にはかえでの体を清めてくれたり、後始末だってしてくれる。
加えてかえでが朝起きた時はもう幸影は目覚めていて、かえでに微笑んでくれる。

いったいいつ休んでいるのかかえでいつも不思議に思う。
それと同時に敗北感も感じるのだが。

残念ながら、かえではこういうことを相談できるような相手に心当たりがなかった。
猿飛咲助、霧隠兄弟や由利鎌清、我来也、穴山大介らはいつでも自分たちを頼ってくれていい、何でも相談してくれ、と言ってくれるが、彼らに相談するべきか迷いがあった。
あまり人を頼ったことのないかえでは、なかなか人に甘えられない。
ーーーかえでが一番に甘えたり、頼ることができる人物は、悩みの種である幸影だ。
どうしたらいいのだろかとお手上げ状態で八方塞がりのかえでは、心ここにあらずでため息が多くなっていた。
先日穴山に言われてたことを思い出す。

『子猫ちゃんは本当に人のことばかりなんだね。そんなにため息をついては幸せが逃げてしまうよ』

また大介にそう心配されてしまう、とかえでがつらつら考えていた時。

「かえでちゃん」

ふと、いつもよりも低い幸影の声が耳元で響いた。
思いがけないほど近い距離にびっくりして思わず離れようと身を引くと、
逃がさない、とばかりに腰を引き寄せられ、右手首を捕まれた。
そしてとどめとばかりに互いの吐息を感じられるほど顔が近づき、上目遣いの瞳がかえでの瞳を覗き込んでいた。

「考え事?なら、俺に一番に相談するように言ったはずでしょ?君が何を憂いているのか、言ってごらん」
君の願いをかなえるのも、君の憂いを晴らすのも、俺の役目だよ。

穏やかな口調でやわらかい声だが、目に本気を感じる。
幸影の本音は瞳に現れることを、かえではよく知っていた。
少し不機嫌そうに見えるのは、かえでに隠し事をされているように感じているからかもしれない。
幸影の独占欲は身をもって理解しているかえでは、慌てて口を開いた。

「ゆ、幸影さんのことを考えていたんです」

「・・・俺のこと?」

「はい」

「・・・そうか・・・。ええっと、俺は何か君を困らせるようなことをしたかな?・・・ああ、もしかして、昨日、明かりを消さなかったこと?でも、俺はもともと夜目が利くから、つけていても消していてもあまり違いはないし・・・それに昨日は消す余裕もなくて・・・」

「ち、違います!」

「ええっと…じゃあ、この間寝殿ではないところで…」

いきなり恥ずかしいことを言い出され、かえでは昨夜を思い出して顔が真っ赤になってしまう。
これ以上話が飛躍する前に切り出してしまうに限る。

「違います!…そ、その、幸影さん」

「なに?」

「お願いです。もっと、休んで欲しいんです。幸影さんが強くてすごい人なのは知っています。でも、無理はしてほしくないんです」

「・・・」

かえでは以前、茶屋で働いていた時に女子が数人で話し合っていたときのことを参考にし、上目遣いで首を傾げてみた。
なんでも恋人にお願いごとをするにはこのようにするのが決まりらしい。
さらに涙目で恋人の手を握りながらすると良い、との話だった。
今片方の手は幸影に捕まえられているため、手を握るのは省略する。
涙目のほうは、幸影が心配ですこし泣きそうになっているから、もしかしてすでになっているかもしれない。

「・・・」

「・・・?」

「・・・」

「・・・あの、幸影さん・・・?」

「・・・」

固まってしまって無言の幸影に、かえではますます幸影の体調が心配になった。
もしかして、無理が祟ってしまったのかもしれない。
やっぱりゆっくり休んでもらうため、ふとんをしかなきゃ、とかえでは動こうとした。
だが。
いつのまにか、抱えられて抱き上げられ、そして夫婦の寝室に移動までしていた。
急な展開に目を白黒させたかえでは、幸影が服を脱ぎ、かえでの服も脱がせようとしているのにもただ驚くしかなかった。

「幸影さん?!」

「なに?」

「何じゃなくて、あの、私の話を聞いてくださってました?どうしてこういう展開に・・・」

「だってあんな涙目かつ上目遣いで首をかしげておねだりされたのが、俺を心配して、俺のためのことで・・・。俺が我慢できると思う?」

「私のお願いを叶えてくださるんじゃないんですか?!」

「それはもちろん。今度の休みはゆっくりしようね」

「いえ、休みも合わせて今も叶えて欲し・・・」

かえでが精一杯言葉を並べても、幸影にはどこ吹く風である。
まるで暖簾に腕押し。
完全に幸影のペースだった。結局かえでは流されてしまう。

「ああもう、本当に君って子は・・・なんでこんなに可愛いんだろう。本当、愛しくてどうにかなってしまいそうだよ」

かえでの意識が朦朧とする間際、そんな幸影の声が聞こえた気がした。


 

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