2014年2月11日火曜日

未来捏造設定②(贅沢・理鳴)


ストックなど書き散らかしたやつしかないにも関わらず、続けてUP。
なんなんだろうね?きまぐれってやつかしら??






16歳になった鳴鳴は、最近とある悩みができた。
しかし、誰に打ち明けるわけもなく日々を過ごしている。
基本的に彼女には誰かを頼る、甘える、助けを求める、という発想がない。
しっかり者で通っていることを自負する鳴鳴は、どちらかというと誰かの相談にのったり、助言を与えたりすることのほうが多いのである。

悩みというほど深刻なわけではない、ということも、誰にも告げぬ一因である。

今日も今日とて門番に賄賂を握らせて市に出ると、その事態は起こった。

「ねえ、君、これから暇かい?」

またか、と思いつつ、なんだか最近よく声をかけられるようになったなあ、と鳴鳴はしみじみと考えこむ。

最初は淑家の侍女であることを狙った盗賊か何かかと思っていた。
しかし、話を聞き流しているうちに、どうやら自分に用があるらしいことを察した鳴鳴はどうやって断ろうかと悩むようになった。
無視し続けるのもうっとおしいし、忙しい、急いでいる、と言ったところで相手が聞いてくれるわけもない。

現実的で道理をわきまえている鳴鳴は、これがいわゆるナンパであることも悟っている。であるから、奢るとか道案内しろ等々言われても、鳴鳴はもちろんほいほいついていくことなどない。
だから何かトラブルに巻き込まれることも特になかった。しかし、それでもやっぱりうっとおしい。
最近はそれが嫌で、あまり外に出たくない。
だが、そうもいかぬのが侍女の定めだ。

「団子が美味しい店、知ってるんだ。一緒にどう?すぐ近くだし」

今日の人はちょっと強引だな、と冷静に考えつつ、大通りに足を向ける。
人目の多い所に行けば、男だってそれなりに自重するだろう。
しかし、その目論見は空しくもはずれる。
鳴鳴が抵抗できないのをいいことに、ますます図にのって腕を組んできたのである。

「君ってスタイルいいよねえ」


軽薄な男の腕が鳴鳴の胸あたりに押し付けられる。
その感触を楽しむ男の下品な笑いにカッとなった鳴鳴が大きな声を上げようとしたその瞬間、男が道端に転がった。

「私の連れに何か用か」


 ああ、どうして、この声は、いつも自分が助けてほしいと思ったタイミングで
聞こえてくるのだろうか
―――運命というものがあるならば、こういうものなのだろうか。

ナンパ男をあっという間に追い払った宰相は、茫然と立っている少女に手を伸ばした。
ぱっと見は無表情だが、その瞳は鳴鳴のことを案ずるように細められている。数年の付き合いから察するに、少し機嫌が悪そうなのを隠そうとしている様子も見られた。
心配と怒りとが混ぜ合わさった無表情。
普段は冷静沈着なこの男が、子どものような感情を垣間見せるその瞬間が、鳴鳴は好きだ。
しかし、そんなことは素直に言えるわけもなく、なんとかお礼を述べることに成功すると、鳴鳴は指し出された手におずおずと自分の手を重ね、歩き出した。
差し出された手は、絡んできた男がいつのまにやら消えていたことすら、鳴鳴が意識する暇もないくらい自然だったため、離す暇を逃し、結局後宮の近くまでそのままだった。

その後、東西の市の警吏の数が増員され、巡回や見回りの回数や指定個所が増えたことを鳴鳴は知る由もない。
ちなみに、どこぞの範家の其から依頼されて、鳴鳴を影で見守っている護衛がいることは皇帝陛下も知らない極秘事項である。

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