※寅撫
※壊れた世界ED
壁に背を押しつけられ、両手は片手で拘束され、
逃げ場をなくされ、圧倒的な力の差を見せつけられていても、
撫子はたいして危機感を抱くことなく、
どこかぼんやりと目の前の人物を見返していた。
寅之助にとって、それは気に触ることだったのか、
おもしろくなさそうに目を細めて撫子との距離をさらに詰めた。
「・・・おい、お嬢」
重くるしく響く低い声。
両手にかかっている力は跡が残ってしまうだろうことが
容易に予想できるぐらいに強い。
だが、撫子にとってはそんなことはどうでもよく、たいして気にしてはいなかった。
ただ、まっすぐ、寅之助を見ていた。
撫子は、いつからか、
この獰猛でギラギラと光る捕食動物を狙っているような危険な瞳を、
怖いとは思わなくなっていた。
それは慣れなのかもしれないし、
寅之助への愛情がさらに増した証なのかもしれなかった。
「・・・きれいね」
だから、無意識に呟いてた。
「あ?」
寅之助が不審そうに撫子を見つめ返す。
「トラの瞳。・・・やっぱり、きれいだわ」
うっとり、と状況を忘れたように頬を染め見惚れている撫子に
寅之助は馬鹿らしくなったように脱力した。
「・・・お前な。この状況でいうことそれかあ?」
「だって、そう思ったんだもの。しょうがないじゃない」
「・・・あのな。お前今、俺に壁際に追い詰められてるって自覚してねぇのか?ここは暴れたり、逃げようとするところだろ」
「あら。どうして?トラが私を傷つけるわけないじゃない」
「・・・まあ、そーだけどよ」
寅之助はどこか納得いかなそうに頷いて撫子の肩に顔をうずめた。
「・・・お前、俺が怖くねぇのか?」
最初の頃――恋人になってからもしばらく――はよく肩をびくつかせて、
こちらの機嫌を窺うようにおびえた目で見てきた女はどこにいったのか、
と寅之助は昔と今の差に目を細める。
「さすがにもう慣れたわ」
「・・・」
それは喜ぶべきところなのか、反応に困る。
「・・・て、流されねえぞ。説明してもらおうじゃねぇか。あの男は誰だ?」
撫子は別に流そうとしたわけではなかったのだが、
寅之助は撫子の言葉を素直に受け止めはせず不機嫌そうに舌打ちした。
「ふふふ。その目、やっぱり好きだわ」
「・・・お嬢?いい加減にしろよ?」
誤魔化すな、と訴える瞳を愛おしげに眺めて撫子はほほ笑む。
「あら?気づいてないの?」
「あ?何がだよ」
「・・・だって、トラ、私が欲しくて欲しくてたまらないって顔してるわ」
「っ・・・!」
勝ち誇ったように笑う撫子に憎らしさと愛おしさの相反する気持ちを感じながら
寅之助は口元をつり上げる。
「・・・お嬢」
覚悟しろよ、と囁いた声は撫子の耳に届いたのかどうか。
息をすることすら許さない、という勢いで寅之助は口づける。
服の裾から弄る手に緊張や恐怖、快感ともなんとも言えぬ震えを覚えながら、
撫子はただ込上げる愛しさのままに溺れていった。
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寅撫好きすぎてつらい
私ここ最近配給少ないCPにしかハマらないのだが、どうすればいいですか
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