2011年10月27日木曜日

口実。


※ぴくしぶにUPしたものの修正版。使い回しとも言う。
※SYK(閻魔×金蟬子)

※現代パラレル






男は真っ暗な闇の中、早足でアパートへと歩いていた。
もっとも帰宅途中というわけではなく、珍しく恋人から連絡がきたのだ。
それが甘い誘いではないことが少し残念だが、
彼女の部屋を訪れる口実さえあればその後はいかようにもはこぶ自信があった。

頬は意識しなければだらしなく緩んでしまいそうだったが、
小さな古ぼけた街灯と月明かりしかないような道だとしても
まだそこそこ人の通りがある場所である。
男はポーカーフェイスを装いつつ歩みを速める。

男のアパートと彼女のアパートは大して離れていない。
いっそ一緒に住むか、と提案したこともあるのだが、
彼女が顔を赤くし絶句してしまったので結局そのままうやむやになった。

彼女の部屋のアパートにものの数分で着いた。
もはや顔パスになった管理人と挨拶を交わし、彼女の部屋の前に立つ。
合鍵は随分前に交換し合ったのだが、
どうせなら迎えて欲しかったのでチャイムを押した。

「・・・早かったのですね」

彼女が部屋着らしい普段よりも随分ゆったり目の格好で出迎えた。
その無防備な姿に甘美な刺激を受けつつ、顔には出さないでああ、と頷く。

「お前からの、誘いだからな」

前半をわずかに強調すると、彼女は少し顔を赤くして俯いた。

彼女は普段ひどくクールで冷静だ。
そのくせ時々見せる脆く狂おしいほどの愛くるしさで
男の心を離さないのだから参る。

「で、今日はどうした」

「実は・・・」

彼女はおずおずと男の様子を伺うように上目遣いで見上げる。

いつもは表情をあまり変えない彼女のこの困ったような情けない姿を
知っている者はどれほどいるのだろう、と男は少し優越感に浸る。

彼女はほとんどのことは完璧にこなす。
特段完璧主義というわけではないのだが、
生まれつき器用な達らしく、経験がなくても見よう見まねでさらっとこなしてしまう。
故に弱点や欠点だけでなく、
容姿・性格・普段の生活からも短所と呼ばれるものもない、
とその他大勢に思われているようだ。

しかし、彼女にも苦手なモノは存在する。
それが機械―――つまりデジタルの現代では欠かせない電気機器だ。

読書が趣味であり、文章の理解力もある彼女だから
取り扱い説明書を読めば理解できそうなのものだが、なぜか対処できないらしい。
本人いわく、基本マニュアルが全然基本ではないらしいが。
携帯はメールと電話しかできないらしく、
買ってからまだ一度も機種は変えていないらしい。
ちなみにメールアドレスも初期設定から変えていなかったので
付き合うようになってから男が適当に設定した。
最新のタッチ式の物を進めてみたが、
原理が理解できないし、そんな壊れやすそうなものは嫌だ、と一刀両断された。
もしかしたらカメラやテレビの機能が付いていることすら知らないのかもしれない。

パソコンは仕事には差し支えない程度には使えるようになったらしいが、
エラー音やフリーズしただけで固まってしまう。
インターネットは出来るらしいが、積極的には使わず、
調べたいことは図書館で新聞や本を用いるらしい。
いつだったかUSBからデータをどう移せばいいのかわからない、
と夜中に半泣きで電話が来た時にはもう色々諦めた。

テレビは電波塔が移行する時にはもう見なくていい、とか言ってたのを
なんとか宥めて最新式のテレビやレコーダーなどをプレゼントし設定した。

3年前に買ったコンポは最近ようやくマスターした、
とかで喜んでいたのを撫でて褒めた記憶がある。

彼女の部屋はそこそこの現代的な部屋になっているが、
これはほとんど男の成果だろう。
彼女が大学の卒論を無事に書けたのも
パソコンの電源の付け方や入力の仕方など、
男が懇切丁寧に教えたからに他ならない。

彼女は男に頼り過ぎていることを気にしているようだったが、
それなりの対価はもらっているし、役得だと思っているので男に不満はない。

「・・・わかったか」

「はい。ありがとうございます」

男が一通り説明し終わり、彼女が持っていたメモ用紙とペンを取り上げて
と片手を掴み頬を撫でると彼女は少し頬を赤くした。
もう数えられないほどしてきたというのにまだ慣れない彼女を愛しく思う。
しかしその男の緩んだ顔を笑っている、と
認識したらしい彼女は赤くなった顔でむっとした。
そんな顔も魅力的だ、と言ったなら彼女はさらに顔を赤くするだろうか、
それともさらに怒るだろうか、と考えながら男は彼女の長い指どおりの良い髪をすく。

「・・・さて、謝礼をもらおうか」

なかなか自分からはできないらしい彼女にいつもどおり催促をすると
彼女は頷いて少し緊張した面持ちで背伸びをし、男の唇に唇を押しあてた。
一瞬で離れてしまわないように髪をすいていた手でそのまま頭を固定し、
もう片方の手で腰を抱く。

結局男主導になった深く長いキスが終わる頃には、二人はソファーに倒れこんでいた。


◆◆◆


金蟬子はふと雨の音に気づき目を覚ました。
いつの間にソファーからベットへ移動したのかもはや記憶は曖昧だ。
まあいいかと流して時計を見ると、もうとっくにいつもの起床時間は過ぎていた。
しかし今日は休日だ。少しの惰眠くらいは許されるだろう。
なにせ寝るのも遅かったのだ。
昨夜のことを思い出したせいで赤くなっているだろう顔を自覚しつつ、
隣の様子を伺うと、男も疲れていたのか、気持ち良さそうに眠っている。
普通なら金蟬子が起きると男も起き出すのだが、
珍しいこともあるものだ、とまじまじと寝顔を見つめる。
そして疲れが溜まっていたのだろうか、と少し罪悪感がわきおこった。

金蟬子は確かにデジタルよりもアナログの方がすきだ。
デジタル電子機器を使わなくてもアナログで構わない、
と避けていた過去があるのも本当だ。
実際にそれ故に大変苦労したことも多々あった。
しかし、仕事場の同僚が親身になって教えてくれるし、
男には言っていないが、パソコンは専門の教室に通ったこともあったおかげか、
今はそれなりに使いこなせるようになった。
故に、昨日男に訊ねたことぐらいだったら自分でどうにかできたのだ。本当は。

だが、それでも、金蟬子は男を頼った。

誘う口実がなくては素直に甘えられないこの性格が自分でも恨めしい。
もしかしたら男はうすうす気がついているかもしれないが。

金蟬子は疲労と少し下半身に違和感を感じながらも身を起こし、
男の髪を撫で、お礼と謝罪の気持ちをこめて頬に唇を落した。


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SYKはもっと評価されるべき。
物語も十分つくりこまれてるし、ゲーム内容もボリューム満点なのに
いったい皆さまは何が不満なんですか。
名前変えられないぐらいおおめにみてほしいものです・・・。
・・・OP使い回しとかいっちゃいや。

閻金増えればいいのに・・・。
という思いから布教用のSS書いてみました。
(布教ならばちゃんと本編設定で書くべきなんだろうけど、
もう本編はあれでちゃんと完結してて入りこむ隙間がないというか、
あの世界を壊したくないのでパラレルで幸せになってもらおうと思ったんだ)

つか、その割に性格が捏造でしかたがない・・・。
ごめんなさい・・・。


私は閻金にハマってから自分が絵を描けないのを呪ったね。
練習したけど3日で無理だと悟った(←)
スタートが遅かったんだ・・・。

金蟬子が裸で閻魔の上着着てる姿、誰か色付きで描いてくれませんか。

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