2011年10月20日木曜日

木漏れ日の中で。



※SYK(閻魔×金蟬子)

※パラレル






「・・・何やってんだお前ら」

悟空の呆れたような声に閻魔は読んでいた本から顔を上げると、
悟空に目を移したが、金蟬子の髪をすいている手はそのままである。
閻魔の膝の上では容姿・頭脳・人柄・実力に文句のつけようがない、
と誉れ高い、軍の上層部ではただ一人の女性、金蟬子がすやすやと眠っている。
寝ている金蟬子はともかく、この男が人の気配に気づかないわけがない。
よって敢えてこのままの状態を保っているのは明白だ。
隠れようともしていないのはいかがなものか。
と、この二人の地位と関係や噂を考え、悟空は頭を抱えた。

そんな悟空にただ口元にわずかな笑みを浮かべただけで返した閻魔は
戦場でのあの鬼や化け物と言っても過言ではない恐ろしい表情はどこにもなく、
ただ甘やかな、優しさで包み込むような顔で金蟬子の髪をすく。
悟空は溜息をついた。

・・・あんな噂、よくいつまで経っても流れてるよな・・・。

金蟬子はそれなりに隠しているようだが、閻魔は自重というものをしないので
結構傍目構わない行動をとる。
それなのに、一向に変わらない噂を不思議に思った。


◆◆◆


この国では東軍・西軍に軍隊が別れて軍事が構成されている。

東軍は最強の武力を誇ると有名だ。
西軍の倍以上の兵力があり、隣国にも例をみないほどの大規模な軍隊である。
兵士は個人個人の力が強く、体格も軍人らしい力強さがあり、
戦場の最前線でも怯むことなく成果を上げ、精神力もきっちり備わっている。
しかし荒々しい性格の連中が多く、軍内での衝突や派閥争いなども時たまある。
そしてそれを諫め、まとめあげているのが今の東軍の将。
歴代最強と名高い、閻魔である。
彼が将についてからというもの負けた戦はない。
それは力や戦術だけで導いた勝利ではなく、彼のカリスマ的指導力のたまものだ。
あの荒くね者をまとめるだけではなく、
その力の最大限の使い方を見極め、的確な指示を出す。
そして彼にはその威圧的な威厳のある雰囲気故か、絶対に勝てる、
と信じ込ませる何かがあった。
それに後押しされるのか、戦意やモチベーションもあがり、
どんな戦況でも成功へ導くことができる。


それに対して西軍はもともとは東軍の補佐部隊として結成された軍隊だったが、
金蟬子が将についてからはその役割は変わった。
補佐ではなく、もうはや精鋭部隊だ。
わずかな兵力でも、息のあった連携プレーや独自の発想から
その戦場や敵の武器・戦術に対応して柔軟に戦い、
少数部隊の西軍としてはまれにみる活躍を治めている。
金蟬子はそんな西軍を率いて戦場をコントロールするかのように巧に指示し、
それぞれ兵士の特徴や特性を生かした戦術で勝利を勝ち取っている女傑だ。
特別に力が強いわけでもないが、その美しい容姿、優れた頭脳、
常に冷静で驕らず下の者達にも心を砕く人柄、
軍人でありながらもどこか上品で優美な様は
一度ついた部下に生涯の忠誠を誓わせるには十分な人物だった。
西軍が少ない人数でも見事に任務達成させるのは、
金蟬子の策によるところも大きいが、
優れた部下がみな団結してまとまっていることも一因であろう。
東軍とは異なり西軍は仲がよく、それは金蟬子にのもとへと集まる
人物がみな彼女を尊敬し、信頼しているからに他ならない。

しかし、現状がどうであれ、今までの歴史的事情や
将が女であるということもあってか、
東軍としてはこの状況はかなり面白くないらしい。
東軍的にはもともと格下だと思っていた西軍が
最近になって勢いづいてきたのだ。
そうなると、僻みや嫌みだけではなく、
喧嘩をふっかけ暴力沙汰になることもあり、東軍と西軍の仲は悪い。
よって将達の仲も悪いだろうとほとんどの人が思っている。
しかしその実、ある特定の人物達の間では
二人が恋仲であることは否定できない事実として認識されていた。

そのある特定の人物達のひとりである悟空は、ここへ来た目的を思い出して
仕事でもまれに見るほどに真剣だった思考を止めた。

「・・・あ~。そういえば、釈迦と大聖が探してたぜ」

釈迦、大聖、それら名に閻魔の眉間に皺が寄った。
戦場でいかなる不利な状況でも余裕の表情を崩さない彼にとっては
他国で名将と恐れられている強敵よりも
味方であるはずの二人の人物の方が脅威らしい。

「・・・どうせ、大した用事ではないだろう」

閻魔より金蟬子と付き合いが長く、同じ西軍に属し、
誰より金蟬子と一緒にいる時間が多い斉天大聖。
『斉天』という『天にも等しい』力を持つとの名を
天帝より賜った実力者であるが、敢えて副将という立場に
甘んじているのは金蟬子がいるからに他ならない。
本気を出せば大聖が将になることだって可能なのだ。
副将という盾に成りえる場所にいて常に金蟬子を守れる彼に
閻魔は嫉妬を覚える。
そして―――釈迦如来。
金蟬子の師であり、この国の重要事項の最終決定権を持つ、
天帝の地位を超越した高貴で唯一の存在。
何事にも興味を示さない彼が金蟬子にだけ寵愛を傾ける。
その過保護ぶりと甘さは有名だ。
他にも弟子はいるはずなのに、金蟬子だけを贔屓するのは
本人無自覚なようだが。

「・・・」

あくまで金蟬子を離そうとしない閻魔の様子に悟空は
もともとそれほどなかった説得する気がさらになくなった。

あれだ、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとかという奴だ。

溜息ひとつ吐いて諦めた悟空は踵を返し、その場を去ることにした。
閻魔はそんな悟空を特になにも言わず見送った。


◆◆◆


「ん・・・」

「起きたか」

まだ寝ぼけているのか、
まだぽや~と気の抜けたままの金蟬子に目覚めのキスを贈る。
濃厚なそれで目が覚めたのか、
金蟬子は状況を把握すると飛びあがった。

「な、・・・!」

人前や外では節度を保ってください、と散々主張している金蟬子だ。
人がいないとはいえ、誰でも来れるような中庭で膝枕とキスをされたのが
よほど恥ずかしかったらしく、戦中でも仕事場でも見られないほど取り乱した。

「いつから、私・・・!」

「ほんの2、3時間前だ。大して時間は経っていない。疲れているなら遠慮なく休め」

「もう十分です!」

真っ赤になった頬を隠すように両手をあてると金蟬子は
逃げるように後ずさるが、それを許す閻魔ではない。

久しぶりの休暇なのだ。
いつまたとれるともしれない二人の時間をこんなにあっさりと
終わらせてやるつもりはさらさらなかった。

腕を伸ばして手を掴みひっぱり、突然の閻魔の行動に対処出来ず
倒れこんだ金蟬子の腰を捕まえて膝の上にのせた。

「なにを・・・!」

「2、3時間とはいえ、この私の膝を独占したのだ。それなりの対価を支払うべきであろう」

「だ、誰も膝枕してなんて頼んでいません!離してください!」

「まあそう暴れるな」

クッとのどの奥で笑う閻魔はそう力を入れて拘束しているように見えないのに
まったくその腕から抜け出せない自分が情けなくなってきた金蟬子だ。
これでも西軍の将なのに、と
不甲斐ない自分についてきてくれる部下に謝りたくなった。
こんなんだからいつまでたっても大聖は
自分を1人で行動させてくれないのだろうか、とだんだん状況を忘れて思慮に耽る。
自分が個別行動出来るならばもっと戦略も広がるのに、
と真面目に考えこんでいると、自分の存在が無視されていると感じたのか、
閻魔が少し気分を害した様子で金蟬子に手を伸ばした。

「・・・っぁ!ど、どこを触っているのです!」

「さて。・・・いつも触っているだろう?」

「な、何を言って・・・!」


閻魔は暴れる金蟬子を片手で制し、何か呪文を呟くと
その場はまるで二人しかいない世界に来たかのように何もない空間になった。
しかし、先ほどまで見えていた緑や綺麗に咲いていた花々が
消えたわけではないことを金蟬子は知っている。
こんな見くらましの結界など、焼け石に水だ。

さらに勢いをつけて暴れ出そうとした金蟬子はしかし、
閻魔の一声に諦めを知った。
「抱くぞ」

その有無言わせぬ口調はなんだかいつもの彼らしくはない。
だが、本気を感じるには十分で。

結局この者には自分は勝てないのか、と悔しく思いながらも
優しい指が生み出す熱のこもった激しい愛撫に
徐々に抜けていく力と体を自覚した金蟬子は
目を閉じてその身をゆだねるしかなかった。



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膝枕と軍パロがやりたかったのです。
ゲーム本編も一応軍事っぽいけどね・・・。

軍とかの特徴の文が書くのめんどくさかったというか、難しかった・・・。
語彙が少ないな自分・・・。

しかし・・・。場所を考えるとかなりやばいですよ、閻魔さん。
まあ、彼ならなんとなくどうにでもできるというか、
大丈夫な気になるから不思議。


てか、大聖に妬く閻魔をもっとみたい。
だれか同士いませんか。

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