※① ②の続きです
※八晴(晴香は登場しませんが)
※御子柴+八雲(自己補完設定=捏造あり)
友紀はいらいらしながら大学の研究室にむかっていた。
一番最初に来たときは迷ってしまったが、
もう通いなれた大学であるので何事もなく到着し扉を開ける。
一応失礼します、と一声かけたが、その声が険しかったのは仕方がないだろう。
どうして私があの人の私物(忘れ物)なんかをわざわざ届けなきゃいけないの!!
もし仕事での雑用だったなら友紀もここまで怒らなかった。
しかし、研究でどうしても必要だが、うっかり忘れてきてしまった。届けろ、
と御子柴から連絡がきて、その必要なものがチュッパチャップスだったのだから
友紀はもう怒り心頭だ。
いったい何に使うというのだ。誰が届けてやるか、
と鼻息を荒くしていると権野になだめられ、しぶしぶ持っていくことになったのだ。
「持ってきましたよ!」
投げつけてやる!と意気込んでいた友紀だが、研究室内にいるのが
御子柴だけではないと気づき、慌てて取り繕う。
整った顔立ちをしているのに寝癖頭の青年だ。
一度見たときがある。
確か、迷ったときに案内をしてくれたカップルの片割れだ。
もっとも、彼は最初はめんどくさそうに嘘をついたのだが。
「あ、あのときの・・・」
青年は無表情で興味なさそうに友紀の方に目を向けると
何事もなかったかのように駒を動かし、立ち上がった。
「・・・次のときまでに考えておいてくださいね」
「・・・う・・・」
あの御子柴がうなっている。
どうやら彼はなかなかの腕利きらしい。
御子柴の珍しい様子を見れたことで怒っていた気持ちが少ししぼんだ。
彼はその後、とくに何も言わずに去っていった。
もしかして私が邪魔だったのだろうか、と思って尋ねると
御子柴は渡したチュッパチャップスを舐めながら否定した。
なんでも、別に矢口が来た時にでも
彼はすぐに帰ってしまうらしいので、いつものことらしい。
御子柴はそれが不満らしく、前はそうでもなかったのに、
といじけた子供のように友紀に背を向けた。
矢口。
友紀のことをバイアス女と初対面で呼び、
態度も話し方も生意気で人のことを馬鹿にしているかのようで
友紀は彼女にあまり良い感情を抱いていない。
そしてぴんときた。
「ふふふ。彼女思いな彼氏ですね」
「は?」
御子柴は突然笑い出した友紀の方を振り向く。
「だって、それって恋人に気を遣ってるんでしょう」
「・・・」
御子柴は、まるで知らないことわざを言われたときのように首をかしげた。
そんな様子に、やっぱり数学だけじゃ人間の思いは測れない、
と内心優越感に浸りながら、友紀は得意げに告げた。
「つまり、女性と狭い室内で2人っきりになった状態を彼女に見られて誤解されたくないんですよ、彼は」
「・・・2人っきりじゃない。僕もいる」
「御子柴さんがトイレに立って、そのときたまたま彼女が来たら?」
「・・・そんなの確率的に・・・」
「ありえないっていえますか?」
御子柴は苦虫をかみしめたような顔をして、そして子供のように唇尖らせ、
小声でぼそぼそつぶやく。
「・・・」
「え?なんていいました?」
「なんでもない!別に君にいったんじゃない!」
ムキになっているのは友紀に説明を受けて
やっとわかったことが恥ずかしいのだろう、と
自己解釈した友紀はところで、と改めて声をかけた。
「チュッパチャップスって、何の実験に必要なんですか」
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御子柴さんはかなり鈍いと思います。
ひそかに続きますが、新妻さんはここで出番終了?かな?
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