2011年2月19日土曜日

別れの詩。


※土千(悲恋)
※現パロ
※無駄にシリアス




都心に近い、新しめのそこそこ広いおしゃれなマンションの一室。
電気がついていたのはわかっていたし、玄関を開けると
女物のパンプスが綺麗に並べてあったので
すぐに中にいる人物には見当がついた。
もっとも、防犯も優れているこの自宅に入れるのは
土方が許可したたった一人だけなのだが。


「千鶴?来てたのか?」

「・・・土方さん」

千鶴の、いつもとは違う顔色に気づいたのだろうか。
土方の目の色が変わった。

「・・・千鶴?どうした?」

「・・・」

千鶴が無言で土方に差し出したのは、
キーホルダーも何もついていない部屋の鍵だった。
ーーーー見慣れた、土方のマンションの合鍵。

付き合って初めての千鶴の誕生日に指輪と一緒に渡した物。
あの時、千鶴は涙を流しながら喜んで受け取ってくれた。

「・・・どういうつもりだ」

「・・・お別れを、言いに、来ました」

一言一言を噛み締めているような、言葉。

「・・・」

言葉が、出なかった。
大の大人が情けない。
こんな一回りも年下の女相手にこの様だ。
自分が、この少女といっても差し支えない女に
骨抜きなのは十分自覚していたが、ここまで重症だともう笑えない。

「・・・いきなり、どうした」

「・・・沖田さんから、聞きました。・・・海外に、転勤するって・・・」

「・・・」

嗚呼。恐れていた事態がきてしまった。
なんとか外堀から埋めて丸めこもうとしたのに、
これではもう駄目だ。
千鶴はもう、覚悟を決めてしまっている。

震えている声、肩、足。
その華奢で愛しい存在を、傍で、ずっと守り続けていたかった。

「・・・私、土方さんの足枷にはなりたくありません」

「・・・馬鹿が。・・・誰が、足枷っつた・・・」


土方の、声も震えている。



「・・・」


色々、迷惑をかけていたことは知っていた。

ライバル会社の次期跡取りの、元とはいえ婚約者だったこともある。
そしてただでさえ女子高生という自分の立場は世間体も悪い。
バイトで知り合い、上司と部下という関係から始まったことを含め、
ゴシップ記事では好き勝手に書き放題、まさにネタ尽くしだ。

彼の優しさに甘えて気づかぬふりをしてきたが、
それももう限界だろう。
彼の転勤が、海外進出への布石だというのは
いったいどこまでが本当なのやら。

もし、自分が彼と年齢が近く、
そこそこの地位もあって、彼に釣り合う女だったならば、
例え極寒の地でも、砂漠でも、紛争地域だろうとついていった。
でも、足を引っ張るだけの存在で、
彼を陥れることしか出来ない邪魔者ならば、
自分は彼の傍にはいられない。

身を切ってでも、この彼への想いすら呑みこんで
彼の幸せを祈ろう。
それしかできない自分には、彼の隣にいることなど許されていない。

「・・・待っててくれと、言ったら駄目か」

「・・・」

「転勤が決まる前から考えてた。お前が学生だろうと、未成年だろうと、関係ねぇ。・・・お前が欲しい」

「・・・」

こんな、心を揺さぶるようなことを、
そんな惑わすような瞳を向けて言わないで欲しかった。
心はもう定めてある。
でも、気持ちは、想いは、今にも溢れだしそうなのに。

「・・・3年とは言わねぇ。・・・1年。1年だ。それぐらい経って、それでも俺を忘れられなかったら、俺と一緒になってくれねぇか」

「・・・無理ですよ・・・」

1年なんかで忘れられるはずがない。3年経ったって忘れられるものか。
この恋を、愛を、どうやったら忘れられるというのだ。

泣かないと、決めていたのに。
どうして。
なんて、ズルイ人。

泣き虫だと、よくからかわれた。
だから、自分の涙に、彼がこんなに困っている様子を見るのは
久しぶりな気がする。
それこそ、出会って間もないころのような。

「・・・千鶴・・・泣くな・・・」

「・・・」

これが最後。
抱き寄せられた彼の胸の中で、自分にそう課して、
力いっぱい抱きついた。
降ってくるキスの雨を受け止めながら。

きっと、明日になれば、笑ってサヨナラを言えるように。


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・・・おかしいな。なんでこうなった。
ただ千鶴ちゃんが土方さんに鍵を返すところを
書きたかっただけなのに・・・。

一人称がバラバラで読みにくいですね・・・。
すみません・・・。

いい作品に出会えると妄想が広がります。

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