2010年12月19日日曜日

存在理由。

※名もないあて馬オリキャラ有
※五稜郭
※土千




その男のあまりに身勝手な、千鶴を、新撰組を、しいては土方を、馬鹿にするような言葉に、
我慢ができなかった。

ぷつんと、音が聞こえた。

「私の幸せを、あなたが決めないでください!!あなたに、何がわかるっていうんですか?!
あの人の、何が・・・!!」


知っている。
あの背が大きくて頼もしいと。
でも、それと同時に、あの背は本当にいろんなものを背負っているのだと。

知っている。
あの大きな手が、抱えているものを。
それは多すぎて、重すぎて、でもだからこそ大事なのだ。
けして手放すわけにはいかなくて。

知っている。
あの腕が、いろんなものを守っていること。
みんなが、その腕を頼りに集まり、糧と、導としているのだと。

知っている。知っている。知っている。
彼が、その身に預けられたものをどんな気持ちで受け取ったのか。
身を切るように、つらく、叫びたくなるような痛みを感じながら。

それでも、彼は。


彼が、近藤さんから引き継いだものを、どうして捨てられるというのか。

千鶴には想像もつかない。

だが、彼だって人間だ。
いくら鬼と呼ばれようとも、羅刹の身に成り果てようと、彼は人だ。

どれだけ重荷を感じただろう。
逃げ出したい時もあったはずだ。
嘆き、悲しみ、なにもかかも投げ出したくなったことだって。

でも、それなのに、彼は必ず進んでいく。


あの人の、あの切ない背など、もう二度と見たくないと千鶴は思う。
そう、二度とあの人にあんな顔はさせたくない。
いや、させない。

千鶴が彼の傍にいるのは、ただ傷を舐めあうためではない。寄り添うためだけではない。

支えるためだ。

そのためならば、なんでもしようと決めている。
絶対に、どんなことでも。


自分に、なにができるのかなんて考えたってわからない。
逆に彼の邪魔になってしまうのもわかっている。

でも、それでもあがきたいのだから。
千鶴はやるしかないのだ。


だから、こんなことで千鶴は負けるわけにはいかない。



もはや叫びのような怒鳴り声に、その男は面くらったらしい。
黙ったまま動かなかった。
そして一瞬黙った千鶴にまた話かけようとしたが、ある一点を見つめて押し黙る。
そんな様子に気づかなかった、気にもしていない千鶴は再び声を荒げる。

「・・・私の、幸せはっ!!!」

「・・・こいつは、幸せなんぞいらないらしい。」

「!・・・んむっ」

まるで黙ってろ、というように口をふさがれ、抱き寄せられた。
抵抗しようとしたら、強く抱きしめるようにますます拘束がきつくなる。
千鶴の口をふさいでいる手は、ごつごつとして男の、刃物を扱う武士の手であるのに関わらず、
争いごとを知らない貴族のように優雅できれいだった。
土方の、その余裕が現れているかのように。


「・・・残念だったな、これはオレのだ」

「「!!」」

千鶴までも震えたことに思うことがあったのか、土方は千鶴に一瞬視線を向けるが、とりあえずこの男を追い払うことを優先させたらしい。
まるで鬼副長時代の雰囲気で男を睨みつける。

「・・・ま、そういうことだ。手出しは無用。・・・次何かあれば、斬る」

「・・・」

男は押し黙ると悔しそうに舌打ちし、踵を返した。

辺りは静かになり、男の気配が消えたころ、千鶴はおずおずと口を開いた。

「・・・あの、土方さ・・・」

「千鶴」

「は、はい!」

「・・・」

「土方さん・・・?」

「悪いな・・・」

「どうして謝るんですか」

「・・・」

千鶴のまっすぐな目に、土方はそれ以上何も言えなくなる。
謝罪を撤回する気にもなれなかったが。
だから、その瞳から逃れるように千鶴を抱きしめた。

「・・・千鶴。自覚しておけ」

「?」

この娘は。本来、手にいれることのできない女のはずだった。
だが、再びその腕を掴んでしまったのなら。
その細い肩を、腰を、抱き寄せてしまったのならば。
愛しい身体を抱きしめてしまったのならば。
もう、手を離すことなどできないのだ。

誰にも、やるものか。


「覚悟しておくんだな」

土方の独りよがりな言葉に首をかしげつつも、
千鶴は己を抱きしめている土方の背に手を回す。
土方はその様子に気を良くしたのか、今までのどこか険を孕んだ空気がなくなる。

「・・・お前は、俺のだってことだよ」

冗談めかして耳元で囁くと、千鶴は動揺したのかやっぱり肩を震わせた。
しかし、先ほどとは違う耳の赤みに土方は口元を弛めると、なお一層強く千鶴を抱きしめた。


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本当は千鶴ちゃん独白で終わるつもりだったんだ・・・。
どこで狂った自分・・・。

なんだか色々詰め込み過ぎて何が言いたいのかわからんものになってしまった・・・。
あ、いつもですか。そうですか・・・。

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