2010年6月20日日曜日

図書館戦争 ※オリキャラ注意  堂郁ちょこっと有。

※別冊2 or 革命エピローグ後
※切なめ
※オリジナルキャラ中心
※いろいろ捏造
※ツッコミ所が多々あるかもしれませんがスルーでお願いします・・・。



つかつかと防衛部には似つかわしくないヒールの音が響いたのは、突然だった。
その図書館員は、颯爽と現れていきなり大声で叫んだ。
その小柄な体格には想像も出来ないような、声で。

「吉田とかいうバカはどいつ?!」
その迫力に圧され一同は一瞬黙るが、おずおずと吉田一士が名乗りを上げた。
「...俺だけど」
するとキッと睨んだかと思うと、吉田の方につかつかと歩み寄り、いきなり手を振り上げた。
パチン!という音が室内に響く 。
唖然としている吉田を前に、まだ殴り足りないといったような目で、自分より頭二つ分は上であろう男を見上げ、その図書館員——山崎まどか一士——は捲し立てる様に言った。
「あんた、銃を撃ちたいとかほざいたそうね!手塚慧会長の素晴らしい功績を踏みにじるつもり?!あんたはあの銃撃がまた始まってもいいと、そう言いたいわけ?!」
「そんなわけないだろ!...あれは...その、つい...」
「つい?!つい、何よ?!あんたは小学生みたいなそんな軽い気持ちで、火気機使用を欲するわけ?!そのせいで何人人が死のうが、どんな被害が出るかもどうでもいいわけ?!...あの悪夢が、どんなに酷いことかもあなたにはわからないのね!そんな奴に図書を守る資格はないわ!笑わせないで!」
「なっ!そんなことお前に言われる筋合いはない!お前は何様のつもりだ!」
「あんたみたいな阿呆に名乗る名はないわ!...遊び半分でこの仕事をやってるくらいなら消えてちょうだい!図書隊に子供は要らないの!」
「なんだと?!」
騒ぎを聞きつけ教官達、上司が集まってくるが、騒ぎを起こした処分ぐらいなら覚悟の上だ。

…言いたいことは言えた。

まどかは、吉田があの発言をした時に殴ったという女性上官をみつけ、感謝と尊敬の眼差しを向けた。

あんたに、何がわかるの。

吉田がフザケ半分冗談半分で言ったことぐらいは分かっている。でも、それでもまどかは許せなかった。どうしても。
一発殴ったぐらいじゃ足りない。
心が叫んでいる。

許せない。許さない。

「落ち着いた?」
あの女性教官——堂上三正——が気を遣ってくれたのか、会議室には二人だけだ。
コーヒーが手渡され、お礼を言うとその三正は穏やかに笑った。
「…あなたのいい分は正しいと思うよ。私もあなたの言うことに賛成だし、言いたい気持ちも分かる。でも、ちょっと騒ぎが大きくなりすぎちゃったね。」
「…他の奴らにも思い知らしてやりたかったからいいんです。処分も覚悟の上だったので」
「それは大丈夫!処分とかはないから。ただの喧嘩だしね」
「…そうですか...」
肩の荷が降りた。安堵の溜息が聞こえていたのか、その三正はまどかを見て悪戯っぽく言った。
「吉田の奴にはもう一発喰らわしてやったから」
「え...。あ、ありがとうございます」
面食らって目を見張る。
特殊部隊が遊撃性に富んでいるのは知っていたが、エリート集団であるからには、それなりの人間で
あろうと勝手に思っていたが、実はそうではないらしい。
少し 、気が緩んだ。
だからだろうか。話すつもりもなかった言葉が溢れてきた。
「...私の父、元良化隊員なんです」
唐突のまどかの言葉に少し驚いた様子だったが、でも何も言わず、堂上三正はいきなりのまどかの話にも静かに耳を傾けてくれる。
何故か、それが、涙が出そうなくらい、嬉しかった。
「...本当に、偶々だったんですよ。なんでこんなことになっちゃったんだろう、なんでよりによってあの日だったんだろうって、今でも思うんですけど。...父は、やっぱりそれも何も言わなかったですけど...」
そんなこと、今更言っても仕方がないことなど、わかっているけれど。
「...私が中学生の時、偶々、母と珍しく図書館に行ったんです。...そしたら、いきなり検閲。避難ましたよ、もちろん。でも混乱で母と逸れて。...図書隊員の人が誘導してくれましたけど、その人が偶然にも問題の図書を運ぶ人だったみたいで。...気づいたら、母とその図書隊員の人が倒れてま
した。私、何も覚えてないんですよ。母の最期も。...なんで血を流して二人が私を庇うように倒れていたかなんて、私知らないんですよ。でも、その図書隊の人が息も荒いのに私に謝ってくるのだけはわかりました。...自分が声をかけたばっかりに、こんな事になってすまないと。私を助けようとしてく
れた人が、...本を守ろうとした人が、私に、謝ってくるんですよ」
堂上三正が、膝の拳に力を入れているのに、初めてその時気づいた。
が、気づかない振りをしてそのまま話す。
「...あそこでしゃべらなければ、彼は死ななかったかもしれないんです。それでも、私に謝ったんです。...絶対に、あの人が悪いわけじゃないのに」
撃った良化隊員は今でも誰かなんてわからない。なぜなら。
「そんなことがあっても、父は仕事を止めなかったけど、その事件の事だって、私に何も言ってこなかった。教えてもくれなかった。調べてもくれなかった。母の法事の時も泣きもしなかった」
そして、3年後交通事故で死んだ。
「父が死んだ時、私は悲しくもありませんでした。なんで検閲の時じゃなかったんだろうってことしか思わなかった。泣きもしないでざまあみろって思ってた。...ひどい娘だってわかってます。親不孝だって周囲の人にも散々言われたし。そんなんで私が図書隊に入る時、やっぱり反対されました。良化隊員
だった父の気持ちも考えろって。...そんな戦いの場所に近づいて欲しくないっていうのが表向きの理由みたいですけど」
それでもまどかは図書隊に入った。
「絶対に変えてやるって思って。こんな現状おかしい。...本のことで、銃撃戦になるなんてありえないって。...なんで本のことで、人が死ななくてはならないんだって」
まどかは息を吐いた。
最前線で、本を守っている人達にこんなことを言うのは本当は忍びない。まどかは一応、恥もデリカシ
ーも常識も持っているつもりだ。
「...そんなこと思う私は、本当は一番この図書隊にふさわしくなんてないんです。だから、全部八つ当たりなんです。. ..ごめんなさい」
頭を下げた瞬間、いきなり抱きしめられた。
あまりにも突然すぎて身を硬くする。
「謝んなくていい。...少なくとも、私には謝んないで。あんた、何も悪くないじゃん。…だからもう、・・・自分を責めなくていいよ」
...そんなこと、言われた事なかった。
ずっとあの時迷った自分を、心の奥で非難していた。
あの時、どうして自分があの場にいたのかと。
でも、誰にも気づかせなかったのに。
同情をされたくない。
実の父親を怨み悲劇のヒロインを装う、愚かな娘だと周りに思わせて、誰かが嫌味を言うことをただ受け入れるつもりだったのに。
「...私も、大切な人、何度も失いかけたよ」
声のトーンがいつもと違う。こっちが素なのだろう。
「思い出すのもつらいけど、でもすごく鮮明に覚えてる。その光景を、今でも夢に見るよ。...何度も。...でも、覚えてなくちゃいけない事だから、私は絶対忘れない」
あの時の気持ちも、その人達の気持ちも、まるごと。
忘れてはいけない。絶対に。
「だから、吉田の言ったことに私もすごく腹が立った。お前はなんていうことを言ったかわかってるのかって。...あなたのした事が八つ当たりなら、私のだって公私混同をした八つ当たり」
涙声なのにも今気づいた。でも、やっぱり何も言えない。今、まどかには言うべき言葉はない。
ただその場で、立場も忘れてその腕に、背に、縋り付いた。
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。声を抑えずに、ただ泣き続けた。


気づいたら寮だった。23時を過ぎている。
いったいどれほど眠っていたのかと自分に呆れる。

(・・・もしかして、堂上三正が運んでくれたのだろうか)

申し訳ない気持ちになったが、随分と寝ていたはずなのだが、まだ体は休息を欲している。
今日はもう諦めて明日またお礼を改めて言いに行こうと決め、また眠りについた。




「…郁」
「あつしさん」
泣いたのであろうことは察しがついた。目がまだ赤い。
「…頑張ったな」
「…ふぇ…」
きっとこの感受性が強い愛しい妻は感情移入しまくって、でもそれでも上官としての面子を保とうと必死だったに違いない。
結局、その面子はギリギリだったろうが。
「…よしよし。いい子だな」
「…篤さん。…いなくなっちゃ嫌です…」
「俺は郁の傍にいるぞ」
「…こ、こわいんです…」
いつまでも目に焼く着いて消えない、あの光景。
無理矢理忘れたいわけじゃない。忘れられない。忘れちゃいけない。どうしても。
でも。それでも、時折切なくなることは本当。
「…私の、傍から、いなく、ならないで…」
切実な、その願いに、でも、堂上は安易に頷いたりはしない。
人生、何があるかわからないのだから。
確かに昔よりはるかに危険が少なくなったのは間違いない。
だが、どんな職業でも、どんな生活をしてても、結局のところ、何が起こるかなんて誰にもわからない。
「…俺は、俺が俺である限り、お前がどんなに嫌がっても、お前から、絶対離れない。一生、離さない。…誰にも、渡してやらん。」
だから堂上は郁にそう言うのだ。
だが、郁はそれが嘘だと確信している。
だって、堂上は郁が嫌がったら、絶対に郁の手を離すに違いないのだ。
きっと、郁が切なくなるほどあっけなく。
郁に誰より甘くて、優しくて、誰よりも郁を愛してくれている堂上が、そんな事を是とするわけがないのだから。
ますます切なくなって郁の目にさらに涙が溢れた。
嫌だ。
「…篤さん…。お願い…。…この手を、離さないで」
聞こえるか聞こえないかの微妙な声で呟き、気絶するように眠る郁に堂上はキスを贈ると、きつく抱きしめたままその場を暫く動かなかった。


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本当はこの後の堂郁の朝の話(ラブラブ)もあったのですが、切なめで終わってみました。

郁ちゃんは危機の時のことも、革命の時のことも、多分すごくトラウマになっちゃうほど怖かったと思うんですよ。
てか、私なら耐えられないし(笑)
・・・私が弱いので登場人物がすごく弱くなるというね・・・。
ああ・・・ごめんなさい。

タイトルが思いつかないので敢えての無題。

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